SyZyGy -しぢじ-

ここ掘れニャンニャン

多和田葉子の日本語作品とその翻訳/Japanischsprachige Werke von Yoko Tawada und deren Übersetzungen

※ 行末の「G」は多和田作品のドイツ語版 (ger), 「J」は日本語版 (jpn) からの翻訳であることを示します. 日本語訳はすべて多和田葉子による自己翻訳です. ドイツ語訳はないが他の言語に訳されている日本語作品にはアスタリスク(*) がついています. 


Latest version → https://note.com/yaoraise2/n/n34f03fdd7837


 

 

 

『旅の時間』私家版, 1979年

ドイツ語作品の代表作『ヨーロッパの始まるところ (Wo Europa anfängt) 』の源流と言えるエッセイ. 雑誌ユリイカ多和田葉子特集号に掲載 (Eureka : Poetry and Criticism, vol. 36, no. 14, 2004). 

 

 

Nur da wo du bist, da ist nichts (あなたのいるところだけ何もない), konkursbuch Verlag, 1987

日独対訳詩集. 訳者はPeter Pörtner. 

・観光客 (Touristen)

・絵解き (Bilderrätsel ohne Bilder)

レニングラード (Liningrad)

・東京公演 (Gastpiel in Tokio)

・裏 (Der Hinterhof)

・八日目 (Der achte Tag)

・月の逃走 (Die Flucht des Mondes)

・病みあがる (Rekonvaleszenz)

・事件 (Vorfall)

・ひとつのもうひとつ (Eins ums Andere)

・おそろしい痴話と革命 (Erschreckendes Liebesgeflüster und Revolution)

・島 (Insel)

・アフリカの舌 (Afrikanische Zunge)

・首都爽快 (Stadtfrische)

・祈禱 (Gebet)

・モスクワ (Moskau)

バンコクの春 (Frühling in Bangkok)

氷菓子 (Gelati)

・日本罐詰め工場の祝日 (Feiertag in einer japanischen Konservenfabrik)

・墜落と再生 (Absturz und Wiedergeburt)

 

 

Das Bad (風呂), konkursbuch Verlag, 1989

短篇「うろこもち」のドイツ語訳. 訳者はPeter Pörtner. 2010年の再版以降の紙書籍版には原文併記. 

──── 英訳 : “The Bath”, in Where Europe Begins, New Directions Publishing, 2002. J

──── イタリア語訳 : Il bagno, Ripostes, 2003. G

──── 韓国語訳 :『목욕탕』을유문화사, 2011. G

──── スペイン語訳 : Escamígera, Ediciones Franz, 2016. G

 

 

『三人関係』講談社, 1992年

・かかとを失くして

────ドイツ語訳 : „Fersenlos“, in Tintenfisch auf Reisen, konkursbuch Verlag, 1994. 訳者はPeter Pörtner. 

──── 英訳 : “Missing Heels”, in The Bridegroom Was a Dog, 講談社インターナショナル, 1998. J

──── 中国語訳 :〈本书包括失去后脚跟〉《三人关系》中国文联出版社, 2001. J

──── カタロニア語訳 : “Talons extraviats”, in El marit gos, Godall Edicions, 2019. J

*・三人関係 (Sannin kankei)

──── 中国語訳 (chi) :《三人关系》中国文联出版社, 2001

 

 

犬婿入り講談社, 1993年

*・ペルソナ (Perusona)

──── 中国語訳 (chi) :〈面具〉《三人关系》中国文联出版社, 2001. 訳者は于荣胜か翁家慧. 

──── タイ語訳 (tha) : “หน้ากาก”, คุณหมาเขยขวัญ, กำมะหยี่, 2014

──── 中国語訳 (chi) :〈面具〉《狗女婿上门》, 河南大学出版社, 2018. 訳者は金晓宇.

──── イタリア語訳 (ita) : Persona, Libreria Editrice Cafoscarina, 2018

──── カタロニア語訳 (cat) : “Persona”, in El marit gos, Godall Edicions, 2019

──── ヘブライ語訳 (heb) : 2019 ,פרסונה, חתן הולך על־ארבע, אסיה

犬婿入り

──── ドイツ語訳 : „Der Hundebräutigam“, in Tintenfisch auf Reisen, konkursbuch Verlag, 1994. 訳者はPeter Pörtner.

──── フランス語訳 : «Le Mari était un chien», dans Littérature japonaise d'aujourd'hui, n°19, 日本ペンクラブ, 1994. 英語版Japanese Literature Today 19号と合冊.

──── 英訳 : The Bridegroom Was a Dog, 講談社インターナショナル, 1998. J

──── 中国語訳 :〈狗女婿上门〉《三人关系》中国文联出版社, 2001. 訳者は于荣胜か翁家慧. J

──── ロシア語訳 : “Собачья невеста”, Она : Новая японская проза, Иностранка, 2003

──── タイ語訳 : คุณหมาเขยขวัญ, กำมะหยี่, 2014. J

──── 中国語訳 :《狗女婿上门》, 河南大学出版社, 2018. 訳者は金晓宇. J

──── ヘブライ語訳 (heb) : 2019 ,חתן הולך על־ארבע, אסיה

──── カタロニア語訳 : El marit gos, Godall Edicions, 2019. J

──── スペイン語訳 : “El novio era un perro”, in El Japón de los perros, Satori Ediciones, 2020. J

──── デンマーク語訳 : Brudgommen var en hund, Forlaget Korridor, 2020. J

 

 

*『アルファベットの傷口』(Alphabet no kizuguchi) 河出書房新社, 1993年

文庫化の際にタイトルが「文字移植」(Moji ishoku) に変更された. 『文字移植』(河出文庫), 『かかとを失くして 三人関係 文字移植』(講談社文芸文庫) 所収.

──── 英訳 (eng) :  “Saint George and the Translator”, in Facing the Bridge, New Directions Publishing, 2007

──── 韓国語訳 (kor) :『글자를 옮기는 사람』workroom, 2021

 

 

『聖女伝説』太田出版, 1996年

ちくま文庫版『聖女伝説』(2016) には書き下ろしの外伝「声のおとずれ」が併録. 初期の代表作だが翻訳はない. 

英語版wikipediaの「Yoko Tawada」の項目に Legend of a Saint (『聖女伝説』) の一部が英訳されFacing the Bridgeに収められたという記述があるが, 正しくは “Saint George and the Translator” (「文字移植」) なので注意. 

 

 

『ゴットハルト鉄道』講談社, 1996年

・ゴットハルト鉄道 (エッセイ „Im Bauch des Gotthards“ を小説化したもの) 

──── 英訳 : “The Gotthard Railway”, in The Bridegroom Was a Dog, 講談社インターナショナル, 1998. J

──── 中国語訳 :〈高德哈尔特铁路〉《三人关系》中国文联出版社, 2001. J

*・無精卵 (Museiran)  

──── 中国語訳 (chi) :〈无精卵〉《三人关系》中国文联出版社, 2001

隅田川の皺男

──── ドイツ語訳 : „Der Faltenmann vom Sumida-Fluss“, in Tintenfisch auf Reisen, konkursbuch Verlag, 1994. 訳者はPeter Pörtner. 

──── 中国語訳 :〈隅田川的皱纹人〉《三人关系》中国文联出版社, 2001. J

 

 

Aber die Mandarinen müssen heute abend noch geraubt werden (でもみかんを盗むのは今夜でないといけない), konkursbuch Verlag, 1997

・Die Rosinenaugen

──── 英訳 : “Raisin Eyes”, in Where Europe Begins, New Directions Publishing, 2002

──── 中国語訳 :〈葡萄乾眼睛〉《A Poem for a Book : 一詩一書》CUHK Press, 2015. 原文と英訳併記. 

・七月から七月へ (日本語詩. Peter Pörtnerによるドイツ語訳併記)

・Spiegelbild

──── 日本語訳 :「鏡像」『きつね月』新書館, 1998年

──── フランス語訳 : « Reflet », dans Narrateurs sans âmes, Verdier, 2001. G

──── 英訳 : “Reflection”, in Where Europe Begins, New Directions Publishing, 2002. G

・かしこい (日本語詩. Peter Pörtnerによるドイツ語訳併記)

・Die Orangerie

──── 日本語版 :「オレンジ園にて」『きつね月』新書館, 1998年

・鳥の名前のついたレストラン (日本語詩. Peter Pörtnerによるドイツ語訳併記)

・Ges-ICH-ter

──── フランス語訳 :  « Visa-je-s », dans Narrateurs sans âmes, Verdier, 2001

──── 英訳 :〈v-I-sages〉《A Poem for a Book : 一詩一書》CUHK Press, 2015. 原文併記. 

──── 中国語訳 :〈我臉有眾〉, ibid.

・犯罪学 (日本語詩. Peter Pörtnerによるドイツ語訳併記)

・Osterby

・Der Hafenpilz 

──── 英訳 :〈The Harbor Mushroom〉, ibid. 原文併記.

──── 中国語訳 :〈海港蘑菇〉, ibid.

・O

・引っ越し (日本語詩. Peter Pörtnerによるドイツ語訳併記)

・Ich wollte keine Brücke schlagen 

──── 英訳 :〈I Didn't Want to Bridge Anything〉, ibid. 原文併記.

──── 中国語訳 :〈我不想起一座橋〉, ibid.

・製造年月日のない万年筆 (日本語詩. Peter Pörtnerによるドイツ語訳併記)

・Der Brunnen ohne Vater

・国境を越えてきた薬売り (同上)

・Hong Kong 1996

・おおアダナおおイスタンブール (同上)

・Ein Gedicht für ein Buch 

──── 英訳 :〈a Poem for a Book〉, ibid. 原文併記.

──── 中国語訳 :〈一詩一書〉, ibid.

・なまるなまり (日本語詩. Peter Pörtnerによるドイツ語訳併記)

・無題 (同上)

 

 

『きつね月』新書館, 1998年

・鏡像 ( „Spiegelbild“ の日本語訳)

・たぶららさ ( „Tabula rasa“ の日本語訳?)

・遺伝子 (ドイツ語で書いたものを日本語に翻案?) 

20年ほど前のブログ記事に多和田ファンである執筆者と多和田葉子のメールでの交流が書かれ, 『きつね月』所収のどの作品が元々ドイツ語で書かれたものなのかが明かされていた. 実際にやりとりがあったかどうか不明ではあるものの, そこに記されていた8作のうち5作のドイツ語版を確認できた. 私がそのブログを読んだのは2019年だが, 2021年現在では記事が消えてしまっている. URLもサイト名も不明. 

なお, 作家デビュー前から多和田と親交があるドイツ文学研究者松永美穂の論文にこの「遺伝子」( „das Gen“ ) への言及があるが, そこでは日本語作品として扱われている. ( https://www.cairn.info/revue-etudes-germaniques-2010-3-page-445.htm 参照)

・詩人が息をしている

・電車の中で読書する人々 ( „Lektüre in einer S-Bahn“ の日本語版)

──── 英訳 : “Readers on the Train”, in Annotated Japanese Literary Gems, Cornell University East Asia Program, 2006. J

──── 韓国語訳 : 「전철에서의 독서」『영혼 없는 작가』 을유문화사, 2011. おそらくG

・ねつきみ

・ギターをこする

・辞書の村 (ドイツ語訳は „Das Wörterbuchdorf“. 訳者はPeter Pörtner. )

・魔除け ( „Talisman“ の日本語訳)

・有名人

・かける

・船旅

・台所

・シャーマンのいる村

*・Zという町 (Z to iu machi)

──── 英訳 (eng) : “A Town Called Z”, in Annotated Japanese Literary Gems, Cornell University East Asia Program, 2006

・ハイウェイ (ドイツ語で書いたものを日本語に翻訳?)

・オレンジ園にて ( „Die Orangerie“ の日本語訳)

・舌の舞踊 ( „Zungentanz“ の日本語訳)

 

 

*『飛魂』(Hikon) 講談社, 1998年

講談社文芸文庫版 『飛魂』(2012) には表題作と『光とゼラチンのライプチッヒ』の4篇「盗み読み」,「胞子」,「裸足の拝観者」,「光とゼラチンのライプチッヒ」を併録. 

──── ポーランド語訳 (pol) : Fruwająca dusza, Karakter, 2009

──── 中国語訳 (chi) :《飞魂》河南大学出版社, 2019.

 

 

『ふたくちおとこ』河出書房新社, 1998年

日独二言語による戯曲“TILL” が元になった小説. 雑誌連載時は「ニーダーザクセン物語」というタイトルであった.

・ふたくちおとこ

*・かげおとこ (Kage otoko)

──── 英訳 (eng) :  “The Shadow Man”, in Facing the Bridge, New Directions Publishing, 2007

・ふえふきおとこ

 

 

『カタコトのうわごと』青土社, 1999年

・すべって、ころんで、かかとがとれた

・病院という異国への旅

・「犬婿入り」について

・翻訳という熱帯旅行

・失われた原稿

・〈生い立ち〉という虚構

・ドイツで書く嬉しさ

・シャミッソー賞を受賞してみて

・吹き寄せられたページたち

・樹木 • 電流 • プラスチック

・「ふと」と「思わず」

・ゆずる物腰ものほしげ

・懐かしいかもしれない

アメリカの印象

・通信手段

・遊園地は嘘つきの天国

・記憶の中の本

・刻み込まれていく文章

・言葉のたけくらべ

・舞台のある小説

・人形の死体/身体/神道

・罫線という私

・衣服としての日本語

・異界の目

・「外国語文学」の時代

ジークリット・ヴァイゲルの「性の地形学」について

・翻訳者の門──ツェランが日本語を読む時 („Das Tor des Übersetzers oder Celan liest Japanisch“ の日本語訳. これを元にしたエッセイが「モンガマエツェランとわたし」) 

──── フランス語訳 : «La porte du traducteur, ou Celan lit le japonais», dans Europe, no 861-862, février, 2001. G

──── ポーランド語訳 : „Brama tłumacza, czyli Celan czyta po japońsku”, Fraza, nr 3, 2002. G

──── 英訳 : “Celan Reads Japanese”, Mantis, 8, Stanford University, 2009 ( https://www.thewhitereview.org/feature/celan-reads-japanese/ ). G

・ラビと二十七の点 („Rabbi Law und 27 Punkte”, Arcadia, 32(1), 1997 を元にしたエッセイ) 

ハムレットマシーンからハムレット

・身体 • 声 • 仮面──ハイナー・ミュラーの演劇と能の間の呼応」(„Körper, Stimme, Maske. Korrespondenzen zwischen dem Theater Heiner Müllers und dem japanischen Nô-Theater“, in : WEIGEL Sigrid (Hg.), Leib- und Bildraum : Lektüren nach Benjamin, Böhlau, 1992 の日本語訳)

・迷いの踊り──ノイマイヤーの「ハムレット

・聴覚と視覚の間の溝を覗く──朗読とダンスの共演「風の中の卵のように」

・「新ドイツ零年」と引用の切り口

・筆の跡

・線は具象 具象は線

花言葉

*・二〇四五年 (2045 nen)

──── フランス語訳 (fra) : « L’an 2045 », dans Po&sie, no 155, 2016 ( https://www.cairn.info/revue-poesie-2016-1-page-31.htm?contenu=article )

 

 

『光とゼラチンのライプチッヒ』講談社, 2000年

*・盗み読み (Nusumi yomi)

──── 中国語訳 (chi) :〈盗读〉《飞魂》河南大学出版社, 2019

*・胞子 (Houshi)

──── 英訳 (eng) : “Spores”, in Where Europe Begins, New Directions Publishing, 2002

──── 中国語訳 (chi) :〈孢子〉《飞魂》河南大学出版社, 2019. J

*・裸足の拝観者 (Hadashi no haikansha)

──── 中国語訳 (chi) :〈裸足的拜观者〉《飞魂》河南大学出版社, 2019

・ころびねこ

・砂漠の歓楽街

*・チャンティエン橋の手前で (Chan Tien bashi no temae de)

──── 英訳 (eng) : “In front of Trang Tien Bridge”, in Facing the Bridge, New Directions Publishing, 2007

・ちゅうりっひ

・捨てない女

・夜ヒカル鶴の仮面 (戯曲 „Die Kranichmaske, die bei Nacht strahlt“ の日本語版)

・光とゼラチンのライプチッヒ

──── ドイツ語訳 : „Das Leipzig des Lichts und der Gelatine“, in Wo Europa anfängt, konkursbuch, 1991. 訳者はPeter Pörtner.

──── 中国語訳 :〈光与明胶的莱比锡〉《飞魂》河南大学出版社, 2019. J

 

 

ヒナギクのお茶の場合』新潮社, 2000年

2020年に文庫化 (『ヒナギクのお茶の場合/海に落とした名前』講談社文芸文庫). 

・枕木

・雲を拾う女

ヒナギクのお茶の場合

・目星の花ちろめいて

・所有者のパスワード

 

 

『変身のためのオピウム』講談社, 2001年

連作短篇 Opium für Ovid (konkursbuch Verlag, 2000) の日本語版. 

英訳はKenji Hayakawa (早川健治) によって現在4章まで訳され, 章ごとに刊行されている. 第4章 „Latona“ については, Susan Bernofskyによる抄訳 “Hair Tax” もある. 前者は (おそらく) 日本語から, 後者はドイツ語から訳された.

フランス語訳は Opium pour Ovide, Verdier, 2002. G

第20章 „Ariadne“も2017年にフィンランド語に訳されている (Parnasso 67巻 6-7号) . G

 

 

*『球形時間』(Kyūkei jikan) 講談社, 2002年

──── 中国語訳 (chi) :《球形时间》麥田出版, 2007

 

 

*『容疑者の夜行列車』(Yōgisha no yakōressha) 青土社, 2002年

──── フランス語訳 (fra) : Train de nuit avec suspects, Verdier, 2005

──── ロシア語訳 (rus) : Подозрительные пассажиры твоих ночных поездов, Азбука-классика, 2009

──── 中国語訳 (chi) : 《嫌疑犯的夜行列车》吉林文史出版社, 2013

──── 韓国語訳 (kor) :『용의자의 야간열차』문학동네, 2016

──── エストニア語訳 (est) : Kahtlased kujud öises rongis, Kultuurileht, 2020

 

 

*『エクソフォニー』(Exophonie) 岩波書店, 2003年

ダカール エクソフォニーは常識

──── 韓国語訳 (kor) : 「다카르 모어 바깥에, 외국어」 『여행하는 말들 엑소포니, 모어 바깥으로 떠나는 여행』 돌베개, 2018

・ベルリン 植民地の呪縛

──── 韓国語訳 (kor) :「베를린 서양과 위생」, ibid.

ロサンジェルス 言語のあいだの詩的な峡谷

──── 韓国語訳 (kor) :「로스앤젤레스 언어 사이에 있는 시적 계곡」, ibid.

・パリ 一つの言語は一つの言語ではない

──── 韓国語訳 (kor) :「파리 한 언어는 하나의 언어가 아니다」, ibid.

ケープタウン 夢は何語で見る?

──── 韓国語訳 (kor) :「케이프타운 꿈은 어떤 언어로 꾸세요」, ibid.

・奥会津 言語移民の特権について

──── 韓国語訳 (kor) :「오쿠아이즈 언어 이주의 특권」, ibid.

バーゼル 国境の越え方

──── 韓国語訳 (kor) :「바젤 국경을 넘는 법」, ibid.

・ソウル 押し付けられたエクソフォニー

──── 韓国語訳 (kor) :「서울 강요받은 엑소포니」, ibid.

・ウィーン 移民の言語を排斥する

──── 韓国語訳 (kor) :「빈 이주자의 언어를 배척하다」, ibid.

ハンブルク 声をもとめて

──── 韓国語訳 (kor) :「함부르크 목소리를 찾아서」, ibid.

・ゲインズヴィル 世界文学, 再考

──── 韓国語訳 (kor) :「게인즈빌 세계문학을 다시 생각하다」, ibid.

・ワイマール 小さな言語, 大きな言語

──── 韓国語訳 (kor) :「바이마르 작은 언어, 큰 언어」, ibid.

・ソフィア 言葉そのものの宿る場所

──── 韓国語訳 (kor) :「소피아 언어, 그것이 머무는 장소」, ibid.

・北京 移り住む文字たち

──── 韓国語訳 (kor) :「베이징 이동해서 사는 문자들」, ibid.

フライブルク 音楽と言葉

──── 韓国語訳 (kor) :「프라이부르크 음악과 언어」, ibid.

・ボストン 英語は他の言語を変えたか

──── 韓国語訳 (kor) :「보스턴 영어는 다른 언어를 바꾸었는가」, ibid.

・チュービンゲン 未知の言語からの翻訳

──── 韓国語訳 (kor) :「튀빙겐 미지의 언어를 번역하기」, ibid.

バルセロナ 舞台動物たち

──── 韓国語訳 (kor) :「바르셀로나 무대동물」, ibid.

・モスクワ 売れなくても構わない

──── 韓国語訳 (kor) :「모스크바 안 팔려도 상관없다」, ibid.

マルセイユ 言葉が解体する地平

──── 韓国語訳 (kor) :「마르세유 언어가 해체될 때」, ibid.

・空間の世話をする人

──── 韓国語訳 (kor) :「공간 청소부는 공간을 돌본다」, ibid.

・ただのちっぽけな言葉

──── 韓国語訳 (kor) :「단지 작고 사소한 말의 힘」, ibid.

・嘘つきの言葉

──── 韓国語訳 (kor) :「거짓말 동화, 음악, 연극」, ibid.

・単語の中に隠された手足や内臓の話

──── 韓国語訳 (kor) :「벼룩시장 손과 발과 내장의 도시」, ibid.

・月の誤訳

──── 韓国語訳 (kor) :「달 직역은 오역일까」, ibid.

・引く話

──── 韓国語訳 (kor) :「끌다 무수한 선이 끌어당기는 세계」, ibid.

・言葉を綴る

──── 韓国語訳 (kor) :「글쓰기 글을 꿰매다」, ibid.

・からだからだ

──── 韓国語訳 (kor) :「몸 언어의 몸과 몸의 언어」, ibid.

・衣装

──── 韓国語訳 (kor) :「옷 짓밟힌 넥타이」, ibid.

・感じる意味

──── 韓国語訳 (kor) :「관능 의미와 감각 사이」, ibid.

 

 

『旅をする裸の眼』講談社, 2004年

──── ドイツ語版 : Das nackte Auge, konkursbuch Verlag, 2004

──── フランス語訳 : L'oeil nu, Verdier, 2005. G

──── 英訳 : The Naked Eyes, New Directions, 2009. G

──── ベトナム語訳 : “Mắt trần”, Nhà Xuất Bản Phụ Nữ, 2011. J, 英訳

──── スウェーデン語訳 : Det nakna ögat, Sadura, 2013. G

──── スペイン語訳 : El Ojo Desnudo, Universidad Nacional Autónoma de México, 2016. G

 

 

『海に落とした名前』新潮社, 2006年

2020年に文庫化 (『ヒナギクのお茶の場合/海に落とした名前』講談社文芸文庫). 

*・時差 (Jisa)

──── 英訳 (eng) : Time Differences, Strangers Press, 2017

・U.S.+S.R. 極東のサウナ ( „U.S. + S.R. Eine Sauna in Fernosteuropa“ の日本語訳)

・土木計画

・海に落とした名前

 

 

アメリカ 非道の大陸』青土社, 2006年

翻訳なし. 

 

 

『傘の死体とわたしの妻』思潮社, 2006年

・出逢い

・前歴

・お見合い

・逢い引き

・二重生活

・嫉妬

・新婚旅行

・想像中絶

・手作り人工授精

・宿り子

・癇癪虫回線

・こくさい保育園

・初心

 

 

『溶ける街 透ける路』日本経済新聞社, 2007年

2021年に文庫化 (『溶ける街 透ける路』講談社文芸文庫). 翻訳なし. 

 

 

*『ソウルーベルリン玉突き書簡 : 境界線上の対話』(Seoul - Berlin Tamatsuki shokan) 岩波書店, 2008年

在日コリアンの作家徐京植との往復書簡.

韓国語訳 (kor) は『경계에서 춤추다』 (창비, 2010) .

 

 

ボルドーの義兄』講談社, 2009年

2019年に文庫化 (『雲をつかむ話/ボルドーの義兄』講談社文芸文庫).

Schwager in Bordeaux (konkursbuch Verlag, 2008) の日本語訳. 

フランス語訳は Le voyage à Bordeaux, Verdier, 2009. G

 

 

『尼僧とキューピッドの弓』講談社, 2010年

エッセイ„Eine Heidin in einem Heidekloster” (2008) を小説化したもの. 翻訳なし. 

 

Okonomiyaki (Tokyo : Veronika Schäpers, 2010)

ブックアーティストVeronika Schäpers とのコラボ作品. 日独併記. 

動画 https://vimeo.com/523515498 参照. 

 

 

『雪の練習生』新潮社, 2011年

──── 中国語訳 : 《雪的练习生》吉林文史出版社, 2012. J

──── ドイツ語版 : Etüden im Schnee, konkursbuch Verlag, 2014

──── 英訳 : Memoirs of a Polar Bear, New Directions, 2016. G

──── フランス語訳 : Histoire de Knut, Verdier, 2016. G

──── イタリア語訳 : Memorie di un'orsa polare, Guanda, 2017. G

──── オランダ語訳 : Memoires van een ijsbeer, Bruna Uitgevers, 2018. G

──── スペイン語訳 : Memorias de una osa polar, Editorial Anagrama, 2018. G

──── アイスランド語訳 : Etýður í snjó, Angústúra, 2018. G

──── デンマーク語訳 : En isbjørns erindringer, Grif, 2018. G

──── トルコ語訳 : Bir Kutup Ayısının Anıları, Siren Yayınları, 2018. G

──── ポルトガル語訳 : Memórias de um urso-polar, Todavia, 2019. G

──── スウェーデン語訳 : En isbjörns memoarer, Bokförlaget Tranan, 2019. G

──── フィンランド語訳 : Muistelmat lumessa, Fabriikki Kustannus, 2019. G

──── ウクライナ語訳 : Мемуари білих ведмедів, Видавництво, 2019. G

──── 韓国語訳 :『눈 속의 에튀드』현대문학, 2020. J

──── ハンガリー語訳 : Egy jegesmedve emlékiratai, Jelenkor Kiadó, 2020. G

──── チェコ語訳 : Vzpomínky ledního medvěda, Dybbuk, 2021. G

 

 

『雲をつかむ話』講談社, 2012年

2019年に文庫化 (『雲をつかむ話/ボルドーの義兄』講談社文芸文庫). 翻訳なし.

 

 

*『言葉と歩く日記』(Kotoba to aruku nikki) 岩波書店, 2013年

──── 中国語訳 (chi) :《和语言漫步的日记》河南大学出版社, 2018

 

 

『献灯使』講談社, 2014年

・献灯使

──── 中国語訳 :《獻燈使》, 瑞蘭國際, 2017. J

──── 英訳 : The Emissary, New Directions, 2018. J

──── 韓国語訳 :「헌등사」『헌등사』자음과모음, 2018. J

──── ドイツ語訳 : Sendbo-o-te, konkursbuch Verlag, 2019. 訳者はPeter Pörtner. 

──── オランダ語訳 : De laatste kinderen van Tokyo, Signatuur, 2019. J

──── タイ語訳 : ผู้อัญเชิญไฟ, กำมะหยี่, 2019. J

──── チェコ語訳 : Emisar, Dybbuk, 2019. J

──── トルコ語訳 : Tokyo'nun Son Çocukları, Siren Yayınları, 2020. J

──── スウェーデン語訳 : Sändebudet, Bokförlaget Tranan, 2020. J

──── ノルウェー語訳 : Sendebudet, Solum Bokvennen, 2020. J

──── アイスランド語訳 : Sendiboðinn, Angústúra, 2020. G

──── デンマーク語訳 : Udsendingen, Grif, 2021. J

*・韋駄天どこまでも (Idaten doko mademo)

──── 中国語訳 (chi) :〈飛毛腿行遍天下〉《獻燈使》, 瑞蘭國際, 2017

──── 韓国語訳 (kor) :「끝도 없이 달리는」『헌등사』자음과모음, 2018

*・不死の島 (Fushi no shima)

──── 英訳 (eng) : “The Island of Eternal Life”, in  Elmer Luke and David Karashima (eds), March was made of Yarn : Reflections on the Japanese Earthquake, Tsunami, and Nuclear Meltdown, Vintage Books, 2012

──── 中国語訳 (chi) :〈不死之島〉《獻燈使》, 瑞蘭國際, 2017

──── 韓国語訳 (kor) :「불사의 섬」『헌등사』자음과모음, 2018

──── ノルウェー語訳 (nor) : “De udødelige øy”, in Knakketiknakk, Solum Bokvennen forlag, 2018

*・彼岸 (Higan)

──── 英訳 (eng) : “The Far Shore”, Words Without Borders (https://www.wordswithoutborders.org/article/the-far-shore) , 2015

──── 中国語訳 (chi) :〈彼岸〉《獻燈使》, 瑞蘭國際, 2017

──── 韓国語訳 (kor) :「피안」『헌등사』자음과모음, 2018

・動物たちのバベル

──── ドイツ語版 : „Mammalia in Babel”, in Mein kleiner Zeh war ein Wort, konkursbuch Verlag, 2013

──── 中国語訳:〈動物們的巴比倫〉 《獻燈使》, 瑞蘭國際, 2017. J

──── 韓国語訳 : 「동물들의 바벨」『헌등사』자음과모음, 2018. J

 

 

Wo Europa anfängt & Ein Gast, konkursbuch Verlag, 2014

・Wo Europa anfängt (ヨーロッパの始まるところ)

──── ポーランド語訳 : „Gdzie zaczyna się Europa”, in Kresy, nr 3, 1996

──── フランス語訳 :  « Là où commence l’Europe », dans Narrateurs sans âmes, Verdier, 2001

──── 英訳 : Where Europe Begins, New Directions Publishing, 2002

──── オランダ語訳 : “Waar Europa begint”, in De berghollander, Voetnoot, 2010

──── 韓国語訳 :「유럽이 시작되는 곳」『영혼 없는 작가』을유문화사, 2011

石器時代のオリンピック (日本語詩. Peter Pörtnerによるドイツ語訳併記)

・ロンドンの目覚め (同上)

・闘牛 (同上)

・客 (同上)

・帰還 (同上)

・かもめ (同上)

・黒鍵 (同上)

・シベリア付近で恋愛沙汰 (同上)

・二十一世紀の手まわしオルガン (同上)

・若返り法 (同上)

・約束の庭 (同上)

・死体のない葬式 (同上)

・詩人の休日 (同上)

・音楽の病院 (同上)

・Das Leipzig des Lichts und der Gelatine (「光とゼラチンのライプチッヒ」のドイツ語訳. 訳者はPeter Pörtner.)

──── 中国語訳 :〈光与明胶的莱比锡〉《飞魂》河南大学出版社, 2019. J

・Die augenlosen Gesichter

・Wir sind gerettet

・Ein Gast (客)

──── 英訳 : “A Guest”, in Where Europe Begins, New Directions Publishing, 2002

 

 

『百年の散歩』新潮社, 2017年

・カント通り

カール・マルクス通り

マルティン・ルター通り

・レネー・シンテニス広場

ローザ・ルクセンブルク通り

・*プーシキン並木通り(Pushkin namiki dōri)

──── 英訳 (eng) : “Pushkin Allee”, in Three Streets, New Directions Publishing, 2020

リヒャルト・ワーグナー通り

・*コルヴィッツ通り(Kollwitz dōri)

──── 英訳 (eng) : “Kollwitzstrasse", ibid.

・トゥホルスキー通り

・*マヤコフスキーリング (Majakowskiring)

──── 英訳 (eng) : "Majakowskiring", ibid.

 

 

『シュタイネ』青土社, 2017年

・パピア・コルプ (紙くず籠か)

・シュティンク・ボーネン (納豆か)

・チトローネ (檸檬か)

・ザイフェ (石鹸か)

・チガレッテ (煙草か)

・アウグスト (八月か)

・グリュービルネ (電球か)

・ジムプトーム (症状か)

・アイ (卵か)

・ギースカンネ (如雨露か)

・ヘルツシュラーク (鼓動か)

・ダルムシュピーゲルング (腸カメラか)

・モルゲンゾンネ (朝日か)

・ツーク (電車か)

・ツァーンパスタ (歯磨き粉か)

・ウーバーン (地下鉄か)

・シェーレ (はさみか)

・ドゥーシェ (シャワーか)

・ブリレ (眼鏡か)

・フリーゲ (蠅か)

 

 

『地球にちりばめられて』講談社, 2018年

2021年に文庫化 (講談社文庫). 翻訳なし.

 

 

『穴あきエフの初恋祭り』文藝春秋, 2018年

・胡蝶、カリフォルニアに舞う

・文通

・鼻の虫

・ミス転換の不思議な赤

・穴あきエフの初恋祭り

・てんてんはんそく

・おと・どけ・もの

 

 

『まだ未来』ゆめある舎, 2019年

・配管工事の前夜

・泡半球に包まれて

・支離滅裂さん

・アクセサリーの汗

・くすもりの出来事

・羽根つけられて

・まだ残影

・乗りこぼし

・電波のさざめく居間

・綴り方、すすぎ方

・外から説明された青春

・情報絨毯

・宇宙の洗面

・りんごの葬り方

・まだ未来

・イチゴの鹿

動物農場の移転

 

 

『星に仄めかされて』講談社, 2020年

翻訳なし.

 

 

『オオカミ県』論創社, 2021年

翻訳なし.

 

 

 

【参考文献】

Matsunaga Miho, „Zum Konzept eines « automatischen » Schreibens bei Yoko Tawada”, Études Germaniques, no. 259, 2010 (https://www.cairn.info/revue-etudes-germaniques-2010-3-page-445.htm )

Nguyen Thanh Tam『重訳の再評価の試み―ベトナムにおける日本文学の重訳を中心に―』, Ph.D. thesis, 神戸大学, 2016 (pdf: http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/thesis2/d1/D1006554.pdf )

Rigault-Gonsho Tom, Yoko Tawada, ou le Comparatisme. L’œuvre et la critique en dialogue, Ph.D. thesis, Sorbonne Université, 2018 (pdf: https://tel.archives-ouvertes.fr/tel-01956519/document )

Secco Valeria, TAWADA Yōko 多和田葉子 : Écrivaine migratrice, entre frontières géographiques et linguistiques, réelles et imaginaires, des littératures japonaise et allemande contemporaines, Lyon : Université Jean Moulin (Lyon 3), 2018 (pdf: https://scd-resnum.univ-lyon3.fr/out/memoires/langues/2018_secco_v.pdf )

Vaglini Eva, La letteratura performativa di Tawada Yōko, Venezia : Università Ca' Foscari Venezia, 2020 (pdf: http://dspace.unive.it/bitstream/handle/10579/17649/989787-1246170.pdf )

近藤裕子「多和田葉子研究のために」『蟹行』5号, 1995年

谷口幸代「多和田葉子書誌 (稿)」, in : 土屋勝彦, G. A. ポガチュニク 編 『多和田葉子 : 越境文化の中間地帯で書くこと』三恵社, 2004年

────「多和田葉子年譜 (稿)」, ibid.

────「多和田葉子全作品解題」『群像』75巻6号, 2020年

廣瀬陽一「多和田葉子著作・同時代批評一覧」『Criticism』2号, 1998年 ( http://srhyyhrs.web.fc2.com/w4.html )

多和田葉子のドイツ語作品とその翻訳/Deutschsprachige Werke von Yoko Tawada und deren Übersetzungen

※ 行末の「G」は多和田作品のドイツ語版 (ger), 「J」は日本語版 (jpn) からの翻訳であることを示します. 日本語訳は2作を除いて多和田葉子による自己翻訳です(「つかのまの夕べのためのバルコニー席 (抄)」とクロード・レヴィ=ストロースと日本の兎」のみ松永美穂訳). 

Latest version → https://note.com/yaoraise2/n/n0f23cae33957

 

 

 

Nur da wo du bist, da ist nichts (Tübingen : konkursbuch Verlag, 1987) 

詩集『あなたのいるところだけ何もない』. 日独対訳. 訳者はPeter Pörtner. 

・Touristen (観光客)

・Bilderrätsel ohne Bilder (絵解き)

・Liningrad (レニングラード)

・Gastpiel in Tokio (東京公演)

・Der Hinterhof (裏)

・Der achte Tag (八日目)

・Die Flucht des Mondes (月の逃走)

・Rekonvaleszenz (病みあがる)

・Vorfall (事件)

・Eins ums Andere (ひとつのもうひとつ)

・Erschreckendes Liebesgeflüster und Revolution (おそろしい痴話と革命)

・Insel (島)

・Afrikanische Zunge (アフリカの舌)

・Stadtfrische (首都爽快)

・Gebet (祈禱)

・Moskau (モスクワ)

・Frühling in Bangkok (バンコクの春)

・Gelati (氷菓子)

・Feiertag in einer japanischen Konservenfabrik (日本罐詰め工場の祝日)

・Absturz und Wiedergeburt (墜落と再生)

 

 

Das Bad (Tübingen : konkursbuch Verlag, 1989)  

短篇「うろこもち」のドイツ語訳. 訳者はPeter Pörtner. 2010年の再版以降の紙書籍版には原文併記. 

──── 英訳 (eng) : “The Bath”, in Where Europe Begins, New Directions Publishing, 2002. J

──── イタリア語訳 (ita) : Il bagno, Ripostes, 2003. G

──── 韓国語訳 (kor) :『목욕탕』 을유문화사, 2011. G

──── スペイン語訳 (spa) : Escamígera, Ediciones Franz, 2016. G

 

 

Wo Europa anfängt (Tübingen : konkursbuch Verlag, 1991) 

初めてドイツ語で書かれた短篇「ヨーロッパの始まるところ」(1988) 所収. 2014年の合本版参照. 未邦訳.

 

 

Das Fremde aus der Dose (Graz ; Wien : Literaturverlag Droschl, 1992)

短篇「缶詰の中の異質なもの」(1990) 所収. Talismanに再録. 未邦訳. 

 

 

Ein Gast  (Tübingen : konkursbuch Verlag, 1993) 

短篇小説「客」(1993) 所収. 2014年の合本版参照. 未邦訳.

 

 

Die Kranichmaske, die bei Nacht strahlt : ein Theaterstück  (Tübingen : konkursbuch Verlag, 1993) 

戯曲集 Mein kleiner Zeh war ein Wort に再録.

 

 

Tintenfisch auf Reisen : 3 Geschichten (Tübingen : konkursbuch Verlag, 1994) 

中篇「かかとを失くして」, 「犬婿入り」, 「隅田川の皺男」のドイツ語訳. 訳者はPeter Pörtner. 

・Fersenlos

──── 英訳 (eng) : “Missing Heels”, in The Bridegroom Was a Dog, Kodansha International, 1998. J

──── 中国語訳 (chi) :〈本书包括失去后脚跟〉《三人关系》中国文联出版社, 2001. J

──── カタロニア語訳 (cat) : “Talons extraviats”, in El marit gos, Godall Edicions, 2019. J

・Der Hundebräutigam

──── フランス語訳 (fra) : «Le Mari était un chien», dans Littérature japonaise d'aujourd'hui, 19, 日本ペンクラブ, 1994. 英語版Japanese Literature Today 19号と合冊.

──── 英訳 (eng) : The Bridegroom Was a Dog, Kodansha International, 1998. J

──── 中国語訳 (chi) :〈狗女婿上门〉《三人关系》中国文联出版社, 2001. 訳者は于荣胜か翁家慧. J

──── ロシア語訳 (rus) : “Собачья невеста”, Она : Новая японская проза, Иностранка, 2003

──── タイ語訳 (tha) : คุณหมาเขยขวัญ, กำมะหยี่, 2014

──── 中国語訳 (chi) :《狗女婿上门》河南大学出版社, 2018. 訳者は金晓宇. J

חתן הולך על־ארבע, אסיה ,2019 : (ヘブライ語 (heb ────

──── カタロニア語訳 (cat) : El marit gos, Godall Edicions, 2019. J

──── スペイン語訳 (spa) : “El novio era un perro”, in El Japón de los perros, Satori Ediciones, 2020. J

──── ノルウェー語訳 (nor) : Brudgommen var en hund, Forlaget Korridor, 2020. J

 ・Der Faltenmann vom Sumida-Fluss

 

 

Tabula rasa (Karlsruhe: Steffen Barth, 1994)

掌編「たぶららさ」『きつね月』(新書館, 1999年) の原文 (?) .

 

 

Spiegelbild (Berlin : Edition Mariannenpresse, 1994)  

掌編「鏡像」対訳. ドイツ語で書かれ, 多和田自身によって日本語に訳された.  ドイツの画家Angelik Riemerとの対話プロジェクト (TAIWA/DIALOG) を本の形にしたもの. Aber die Mandarinen müssen heute abend noch geraubt werden に原文のみ再録. 

 

 

Talisman (Tübingen : konkursbuch Verlag, 1996) 

・Von der Muttersprache zur Sprachmutter 

──── ポーランド語訳 (pol) : Od mowy macierzystej do matki mowne”, Pogranicza, nr 1, 1996

──── 英訳 (eng) : “From Mother Tongue to Linguistic Mother”, Manoa, Vol. 18, no.1, 2006

──── スウェーデン語訳 (swe) : “Från modersmål till språkmoder”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Fra morsmål til målmor”, Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

──── 韓国語訳 (kor) :「엄마말에서 말엄마로」『영혼 없는 작가』을유문화사, 2011

──── イタリア語訳 (ita) : “Dalla Linguamadre alla Madrelingua ; I buchi del linguaggio”, Lettera internazionale, no 111, 2012 ( https://www.academia.edu/2476578/Dalla_Linguamadre_alla_Madrelingua_Yoko_Tawada )

・Erzähler ohne Seelen 

──── フランス語訳 (fra) : Narrateurs sans âmes, Verdier, 2001

──── 英訳 (eng) : “Storytellers without Souls”, in Where Europe Begins, New Directions Publishing, 2002

──── ポーランド語訳 (pol) : Opowiadacz bez duszy”, Wyrazy, nr 1, 1997

──── スウェーデン語訳 (swe) : “Berättare utan själar”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Fortellere uten sjeler”, Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

──── 韓国語 (kor) :『영혼 없는 작가』을유문화사, 2011

・Ein deutsches Rätsel

──── スウェーデン語訳 (swe) : “Rothenburg ob der Tauber: En tysk gått”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Rothenburg ob der Tauber: En tysk gåte”, Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

・Das Fremde aus der Dose

──── フランス語訳 (fra) : «Quelque chose d’étrange sorti de la boîte», dans Narrateurs sans âmes, Verdier, 2001

──── 英訳 (eng) :  “Canned Foreign”, in Where Europe Begins, New Directions Publishing, 2002

──── スウェーデン語訳 (swe) : “Främling på burk”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Det fremmede på boks”, Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

──── 韓国語訳 (kor) :「통조림 속의 낯선 것」『영혼 없는 작가』을유문화사, 2011

・"Eigentlich darf man es niemandem sagen, aber Europa gibt es nicht"

──── フランス語訳 (fra) : « Il ne faut le dire à personne, mais l’Europe n’existe pas », dans Narrateurs sans âmes, Verdier, 2001

──── スウェーデン語訳 (swe) : “»Egentligen får man inte tala om det för någon, men det finns inget Europa«”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : “»Egentlig må man ikke si det til noen, men Europa finnes ikke«”, Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

──── 韓国語訳 (kor) :「“유럽은 원래부터 없었다고 아무에게도 이야기해서는 안 된다”」『영혼 없는 작가』 을유문화사, 2011

・Talisman

──── 日本語訳 (jpn) :「魔除け」『きつね月』新書館, 1998年

──── 英訳 (eng) : “The Talisman”, in Where Europe Begins, New Directions Publishing, 2002. G

──── スウェーデン語訳 (swe) : “Talisman”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Talisman”, Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

──── 韓国語訳 (kor) :「부적」『영혼 없는 작가』을유문화사, 2011. G

・Lektüre in einer S-Bahn

──── 日本語版 (jpn) :「電車の中で読書する人々」『きつね月』新書館, 1998年

──── フランス語訳 (fra) : «Lecture dans un train de banlieue», dans Scherzo, 2002

──── スウェーデン語訳 (swe) : “Pendeltågslektyr”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Pendeltoglektyre”, Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

──── 韓国語訳 (kor) :「전철에서의 독서」『영혼 없는 작가』을유문화사, 2011. G

・Das Wörterbuchdorf (短篇「辞書の村」のドイツ語訳. 日独併記. 訳者はPeter Pörtner.) 

──── スウェーデン語訳 (swe) : “Ordboksbyn”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

・Die Mineralogie der Liebe

──── スウェーデン語訳 (swe) : “Kärlekens mineralogi”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Kjærlighetens mineralogi”, Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

・Notizen auf den Lofoten

──── スウェーデン語訳 (swe) : “Anteckningar på Lofoten”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Notiser i Lofoten”, Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

・Im Bauch des Gotthards (短篇「ゴットハルト鉄道」の元になったエッセイ)

──── 日本語版 (jpn) :『ゴットハルト鉄道』講談社, 1996年

──── 英訳 (eng) : “The Gotthard Railway”, in The Bridegroom Was a Dog, Kodansha International, 1998. J

──── スウェーデン語訳 (swe) : “I Gotthards mage”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : “I Gotthards mage”, Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

・Sieben Geschichten der sieben Mütter

──── スウェーデン語訳 (swe) : “Sju historier om sju mödrar”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Sju historier om sju mødre”, Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

──── 韓国語訳 (kor) :「일곱 어머니의 일곱 얼굴들」『영혼 없는 작가』을유문화사, 2011

・Sonntag - der Tag der Ruhe, der Tag der Kühe

──── スウェーデン語訳 (swe) : “Söndag - vilodag och ro, och ko”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Søndag - roens dag, kuens dag”, Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

・Der Klang der Geister

──── ポーランド語訳 (pol) :  Brzmienie duchów”, Monochord, vol. 16/17, 1997

──── スウェーデン語訳 (swe) : “Andars klang”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Åndenes klang”, Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

・Das Tor des Übersetzers oder Celan liest Japanisch 

──── 日本語訳 (jpn) :「翻訳者の門──ツェランが日本語を読む時」『カタコトのうわごと』講談社, 1999年

──── フランス語訳 (fra) : «La porte du traducteur, ou Celan lit le japonais», dans Europe, no 861-862, février, 2001. G

──── ポーランド語訳 (pol) : „Brama tłumacza, czyli Celan czyta po japońsku”, Fraza, nr 3, 2002. G

──── 英訳 (eng) : “Celan Reads Japanese”, Mantis, 8, Stanford University, 2009 ( https://www.thewhitereview.org/feature/celan-reads-japanese/ ). G

──── スウェーデン語訳 (swe) : “Översättarens port eller Celan läser japanska”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009. G

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Oversetterens port eller Celan leser japansk”, Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010. G

・Über das Holz

──── スウェーデン語訳 (swe) : “Om trä”, Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Om tre”, Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

 

 

Ein Gedicht für ein Buch (Hamburg : CTL Press, 1996)

Stephan Köhlerによる写真の上に多和田のドイツ語詩 „Ein Gedicht für ein Buch“ が置かれる. 詩のみAber die Mandarinen müssen heute abend noch geraubt werden 再録. 

この詩の原文, 英訳, 中国語訳は多和田葉子《A Poem for a Book : 一詩一書》(Hong Kong : CUHK Press, 2015) にも収録.

 

 

Der fremde Blick : Schreiben in neuen Kulturen (Zürich : Pinkus Genossenschaft, 1996)

よくわからん.

 

 

Wie der Wind im Ei  (Tübingen : konkursbuch Verlag, 1996) 

戯曲「卵の中の風のように」. 戯曲集 Mein kleiner Zeh war ein Wort に再録. 翻訳なし. 

 

 

Aber die Mandarinen müssen heute abend noch geraubt werden   (Tübingen : konkursbuch Verlag, 1997)

・Die Rosinenaugen

──── 英訳 (eng) : “Raisin Eyes”, in Where Europe Begins, New Directions Publishing, 2002

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Rosinauge”, Men mandarinane må me få røva i kveld, Samlaget, 2007

──── 中国語訳 (chi) :〈葡萄乾眼睛〉《A Poem for a Book : 一詩一書》CUHK Press, 2015. 原文と英訳併記. 

・Von Juli zu Juli (詩「七月から七月へ」のドイツ語訳. 訳者はPeter Pörtner. 原文併記)

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Frå juli til juli”, Men mandarinane må me få røva i kveld, Samlaget, 2007

・Spiegelbild

──── 日本語訳 (jpn) :「鏡像」『きつね月』新書館, 1998年

──── フランス語訳 (fra) : « Reflet », dans Narrateurs sans âmes, Verdier, 2001. G

──── 英訳 (eng) : “Reflection”, in Where Europe Begins, New Directions Publishing, 2002. G

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Spegelbilde”, Men mandarinane må me få røva i kveld, Samlaget, 2007

・Klug (詩「かしこい」のドイツ語訳. 訳者はPeter Pörtner. 原文併記)

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Klok”, ibid.

・Die Orangerie

──── 日本語版 (jpn) :「オレンジ園にて」『きつね月』新書館, 1998年

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Oransjeriet”, Men mandarinane må me få røva i kveld, Samlaget, 2007. G

・Das Restaurant mit dem Vogelnamen (詩「鳥の名前のついたレストラン」のドイツ語訳. 訳者はPeter Pörtner. 原文併記)

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Restauranten med fuglenamnet”, ibid.

・Ges-ICH-ter

──── フランス語訳 (fra) :  « Visa-je-s », dans Narrateurs sans âmes, Verdier, 2001

──── ノルウェー語訳 (nor) : “An-sikt”, Men mandarinane må me få røva i kveld, Samlaget, 2007

──── 英訳 (eng) :〈v-I-sages〉《A Poem for a Book : 一詩一書》CUHK Press, 2015. 原文併記. 

──── 中国語訳 (chi) : 〈我臉有眾〉, ibid. 

・Kriminologie (詩「犯罪学」のドイツ語訳. 訳者はPeter Pörtner. 原文併記)

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Kriminologi”, Men mandarinane må me få røva i kveld, Samlaget, 2007

・Osterby

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Osterby”, ibid. 

・Der Hafenpilz 

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Hamnesoppen”, ibid.

──── 英訳 (eng) :〈The Harbor Mushroom〉《A Poem for a Book : 一詩一書》CUHK Press, 2015. 原文併記. 

──── 中国語訳 (chi) :〈海港蘑菇〉, ibid.

・O

──── ノルウェー語訳 (nor) : “O”, Men mandarinane må me få røva i kveld, Samlaget, 2007

・Umzug (詩「引っ越し」のドイツ語訳. 訳者はPeter Pörtner. 原文併記)

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Flytting”, ibid.

・Ich wollte keine Brücke schlagen

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Eg ville ikkje slå ei bru”, ibid. 

──── 英訳 (eng) :〈I Didn't Want to Bridge Anything〉《A Poem for a Book : 一詩一書》CUHK Press, 2015. 原文併記. 

──── 中国語訳 (chi) :〈我不想起一座橋〉, ibid.

・Ein Füllfederhalter ohne Herstellungsdatum (詩「製造年月日のない万年筆」のドイツ語訳. 訳者はPeter Pörtner. 原文併記)

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Ein fyllepenn utan produksjonsdato”, Men mandarinane må me få røva i kveld, Samlaget, 2007

・Der Brunnen ohne Vater

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Brønnen utan far”, ibid.

・Der Arzneihändler, der über die Grenze kam (詩「国境を越えてきた薬売り」. 同上)

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Apotekaren som kom over grensa”, ibid. 

・Hong Kong 1996

──── ノルウェー語訳 (nor) : “HongKong 1996”, ibid.

・O Adana o Istanbul (詩「おおアダナおおイスタンブール」. 同上)

──── ノルウェー語訳 (nor) : “O Adana o Istanbul”, ibid.

・Ein Gedicht für ein Buch 

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Eit dikt til ei bok”, ibid.

──── 英訳 (eng) :〈a Poem for a Book〉《A Poem for a Book : 一詩一書》CUHK Press, 2015. 原文併記. 

──── 中国語訳 (chi) :〈一詩一書〉, ibid.

・Dialektüre (詩「なまるなまり」のドイツ語訳. 訳者はPeter Pörtner. 原文併記)

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Dialektyre”, Men mandarinane må me få røva i kveld, Samlaget, 2007

・Feiern können wir auch morgen Aber die Mandarinen Müssen noch heute abend Geraubt werden (詩「無題」. 同上)

──── ノルウェー語訳 (nor) : “Feire kan vi i morgon også Men mandarinane må vi få røva i kveld”, ibid.

 

 

Verwandlungen : Tübinger Poetik-Vorlesung  (Tübingen : konkursbuch Verlag, 1998) 

講義録. 未邦訳.

──── スウェーデン語訳 (swe) : Talisman ; Förvandlingar, Ariel, 2009

──── ノルウェー語訳 (nor) : Talisman ; Forvandlinger, Den grønne malen, 2010

 

 

Orpheus oder Izanagi : Hörspiel ; Till : Theaterstück   (Tübingen : konkursbuch Verlag, 1998)  

ドイツ語のラジオドラマ台本と日独両言語による戯曲.  „Till” は『ふたくちおとこ』の原型. 戯曲集 Mein kleiner Zeh war ein Wort に再録.

 

 

F the geisha  (Tübingen : konkursbuch Verlag, 1999) 

多和田葉子のエッセイが載ったMario Ambrosius (亜真里男) の写真集. 日独併記. 日本版は同年河出書房新社から刊行. 

 

 

Spielzeug und Sprachmagie in der europäischen Literatur : eine ethnologische Poetologie (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2000) 

博士論文『ヨーロッパ文学における玩具と言語魔術』. 翻訳なし. 

 

 

Opium für Ovid : ein Kopfkissenbuch von 22 Frauen (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2000) 

英訳 (eng) であるOpium for OvidKenji Hayakawa (早川健治) によって現在4章まで訳され, 章ごとに刊行されている. 第4章 „Latona“ については, Susan Bernofskyによる抄訳 “Hair Tax” もある. 前者は (おそらく) 日本語から, 後者はドイツ語から訳された. 第20章 „Ariadne“も2017年にフィンランド語 (fin) に訳されている (Parnasso 67巻 6-7号) .

──── 日本語訳 (jpn) :『変身のためのオピウム』講談社, 2001年

──── フランス語訳 (fra) : Opium pour Ovide, Verdier, 2002. G

 

 

Überseezungen  (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2002) 

・Zungentanz

──── 日本語訳 (jpn) :「舌の舞踊」『きつね月』新書館, 1998年

──── 英訳 (eng) : “Tongue Dance”, in Where Europe Begins, New Directions Publishing, 2002. G

──── ポルトガル語訳 (por) : “Dança  da língua”, in ÜBERSEEZUNGEN : Retrato de uma língua e outras criações, Class, 2019. G

・Der Apfel und die Nase

──── ポルトガル語訳 (por) : “A maçã e o nariz”, ibid.

・Wörter, die in der Asche schlafen

──── ポルトガル語訳 (por) : “Palavras que dormem nas cinzasmaçã”, ibid.

・Ein chinesisches Wörterbuch

──── ポルトガル語訳 (por) : “Um dicionário chinês”, ibid.

・Musik der Buchstaben

──── フランス語訳 (fra) : « Musique des lettres », dans Narrateurs sans âmes, Verdier, 2001

──── 韓国語訳 (kor) :「글자들의 음악」『영혼 없는 작가』을유문화사, 2011

──── ポルトガル語訳 (por) : “Música das letras”, in ÜBERSEEZUNGEN : Retrato de uma língua e outras criações, Class, 2019

・Die Zweischalige

──── フランス語 (fra) : «La Bivalve», dans Passage, 3, 2000

──── ポルトガル語訳 (por) : “A bivalva”, in ÜBERSEEZUNGEN : Retrato de uma língua e outras criações, Class, 2019

・Die Eierfrucht

──── 韓国語訳 (kor) :「가지」『영혼 없는 작가』을유문화사, 2011

──── ポルトガル語訳 (por) : “A berinjela”, in ÜBERSEEZUNGEN : Retrato de uma língua e outras criações, Class, 2019

・Die Botin 

──── 韓国語訳 (kor) :「심부름꾼」『영혼 없는 작가』을유문화사, 2011

──── ポルトガル語訳 (por) : “A mensageira”, in ÜBERSEEZUNGEN : Retrato de uma língua e outras criações, Class, 2019

・Wolkenkarte

──── ポルトガル語訳 (por) : “Mapa das nuvens”, ibid. 

・Eine leere Flasche

──── フランス語訳 (fra) : « Une bouteille vide », dans Narrateurs sans âmes, Verdier, 2001

──── 韓国語訳 (kor) :「빈 병」『영혼 없는 작가』을유문화사, 2011

──── ポルトガル語訳 (por) : “Uma garrafa vazia”, in ÜBERSEEZUNGEN : Retrato de uma língua e outras criações, Class, 2019

・Bioskoop der Nacht

──── ポルトガル語訳 (por) : “Bioskoop noturno”, ibid.

・Die Ohrenzeugin

──── 韓国語訳 (kor) :「이격자 (耳擊者)」『영혼 없는 작가』 을유문화사, 2011

──── ポルトガル語訳 (por) : “Testemunha auditiva”, in ÜBERSEEZUNGEN : Retrato de uma língua e outras criações, Class, 2019

・Eine Scheibengeschichte

──── 韓国語訳 (kor) :「판 이야기」『영혼 없는 작가』을유문화사, 2011

──── ポルトガル語訳 (por) : “Uma história de disco”, in ÜBERSEEZUNGEN : Retrato de uma língua e outras criações, Class, 2019

・Porträt einer Zunge

──── 英訳 (eng) : “Portrait of a Tongue”, in Yoko Tawada's Portrait of a Tongue, University of Ottawa Press, 2013

──── ポルトガル語訳 (por) : “Retrato de uma língua”, in ÜBERSEEZUNGEN : Retrato de uma língua e outras criações, Class, 2019

 

 

Das nackte Auge : Erzählung (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2004) 

長篇『旅をする裸の眼』(講談社, 2004) のドイツ語版. 二言語同時進行で書かれた. 

──── フランス語訳 (fra) : L'oeil nu, Verdier, 2005. G

──── 英訳 (eng) : The Naked Eyes, New Directions Publishing, 2009. G

──── ベトナム語訳 (vie) : “Mắt trần”, Nhà Xuất Bản Phụ Nữ, 2011. J, eng

──── スウェーデン語訳 (swe) : Det nakna ögat, Sadura, 2013. G

──── スペイン語訳 (spa) : El Ojo Desnudo, Universidad Nacional Autónoma de México, 2016. G

 

 

Was ändert der Regen an unserem Leben? Oder ein Libretto  (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2005) 

戯曲集 Mein kleiner Zeh war ein Wort に再録.

 

 

Sprachpolizei und Spielpolyglotte  (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2007) 

・Slavia in Berlin

・An der Spree

──── 日本語訳 (jpn) :「シュプレー川のほとりで」『Deli』論創社, 5号, 2005年

──── フランス語訳 (fra) : «Au bord de la Spree», dans, Sanson David(éd.), Berlin : histoire, promenades, anthologie et dictionnaire, Robert Laffont, 2014

・Sprachpolizei und Spielpolyglotte

・Rabbi Löw und 27 Punkte

──── 日本語版 (jpn) : 「ラビと二十七の点」『カタコトのうわごと』青土社, 1999年

・Zu Else Lasker-Schülers „Mein blaues Klavier“

・Metamorphosen des Heidenrösleins

・Die Krone aus Gras. Zu Paul Celans „Die Niemandsrose“

──── フランス語訳 (fra) : «La couronne d'herbe. Sur Paul Celan», dans Littérature et nation, 33, 2006

・Kleist auf Japanisch

・Metamorphosen der Personennamen

・Ma und Mu

・Wohnen in Japan

・Baumkuchen

・U.S. + S.R. Eine Sauna in Fernosteuropa

──── 日本語訳 (jpn) :「U.S.+S.R.極東欧のサウナ」『海に落とした名前』

・Biografie und Bibliografie

 

 

Schwager in Bordeaux : Roman  (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2008) 

──── 日本語訳 (jpn) : 『ボルドーの義兄』講談社, 2009年

──── フランス語訳 (fra) : Le voyage à Bordeaux, Verdier, 2009. G

 

 

Sonderzeichen Europa (Ottensheim/Donau : Ed. Thanhäuser, 2009)

ハンガリーの演出家 László Mártonとの往復書簡. 翻訳なし. 

 

 

Poesie und Stille : Schriftstellerinnen schreiben in Klöstern (Göttingen : Wallstein Verlag, 2009)

『尼僧とキューピッドの弓』(2010) の元になったエッセイ„Eine Heidin in einem Heidekloster” 所収. 

 

 

Yoko Tawada : Poetik der Transformation ; Beiträge zum Gesamtwerk

Mit dem Stück Sancho Pansa (Tübingen : Stauffenburg Verlag, 2010)

多和田葉子論集. 戯曲「サンチョ・パンサ」のドイツ語訳所収. 戯曲集 Mein kleiner Zeh war ein Wort に再録.

 

 

Okonomiyaki (Tokyo : Veronika Schäpers, 2010)

ブックアーティストVeronika Schäpers とのコラボ作品. 日独併記. 

動画 https://vimeo.com/523515498 参照. 

 

 

Abenteuer der deutschen Grammatik : Gedichte  (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2010)

・Abenteuer der deutschen Grammatik 

・Eine poetische Nachbarschaft 

・Die Mischschrift des Mondes 

・Loblieder für die Toten 

・Utopien Zur Autorin Impressum

 

 

Fremde Wasser : Vorlesungen und wissenschaftliche Beiträge ; Hamburger Gastprofessur für interkulturelle Poetik  (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2012) 

東日本大震災を背景とした詩学講座とシンポジウムの記録. 

 

 

Mein kleiner Zeh war ein Wort : Theaterstücke  (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2013) 

・Die Kranichmaske, die bei Nacht strahlt

──── ポーランド語訳 (pol) : „Żurawia maska”, Format (Wrocław), 1996/1997, nr 1/2, dod. G

──── 日本語版 (jpn) :「夜ヒカル鶴の仮面」『光とゼラチンのライプチッヒ』講談社, 2000年

・Wie der Wind im Ei (中篇「無精卵」『ゴットハルト鉄道』をドイツ語の戯曲に翻案したもの) 

・Orpheus oder Izanagi : die Rückkehr aus dem Reich der Toten

・Till

・Sancho Pansa (戯曲「サンチョ・パンサ」のドイツ語訳. 日本語原文は雑誌『すばる』集英社, 2000年10月号, 100-116頁) 

・Schwarzeis

・Pulverschrift Berlin (戯曲「粉文字ベルリン」)

・Ich wollte nur Geld, bekam aber die Wahrheit

・Was Ändert der Regen an Unserem Leben?

・Dejima

・Mein kleiner Zeh war ein Wort (戯曲「私の小指は言葉だった」)

・Kafuka Kaikoku (戯曲「カフカ開国」) 

・Mammalia in Babel (戯曲「動物たちのバベル」『献灯使』のドイツ語訳)

 

 

Wo Europa anfängt & Ein Gast : Erzählungen und Gedichte  (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2014) 

・Wo Europa anfängt

──── ポーランド語訳 (pol) : Gdzie zaczyna się Europa”, in Kresy, nr 3, 1996

──── フランス語訳 (fra) :  « Là où commence l’Europe », dans Narrateurs sans âmes, Verdier, 2001

──── 英訳 (eng) : Where Europe Begins, New Directions Publishing, 2002

──── オランダ語訳 (dut) : “Waar Europa begint”, in De berghollander, Voetnoot, 2010

──── 韓国語訳 (kor) :「유럽이 시작되는 곳」『영혼 없는 작가』을유문화사, 2011

・Das Mammut (der Feigling) versteckt sich im Realen (詩「石器時代のオリンピック」のドイツ語訳. 訳者はPeter Pörtner. 原文併記)

・Erwachen in London (詩「ロンドンの目覚め」. 同上)

・Ein Stierkampf  (詩「闘牛」. 同上)

・Ein Gast (詩「客」. 同上)

・Eine Rückkehr (詩「帰還」. 同上)

・Möwe (詩「かもめ」. 同上)

・Schwarze Tasten (詩「黒鍵」. 同上)

・Eine Liebesaffäre in der Nähe Sibiriens (詩「シベリア付近で恋愛沙汰」. 同上)

・Eine Drehorgel aus dem 21. Jahrhundert (詩「二十一世紀の手まわしオルガン」. 同上)

・Eine Verjüngungsmethode (詩「若返り法」. 同上)

・Der verabredete Garten (詩「約束の庭」. 同上)

・Totenfeier ohne Leiche (詩「死体のない葬式」. 同上)

・Ein arbeitsfreier Tag der Dichterin (詩「詩人の休日」. 同上)

・Sanatorium Musicale (詩「音楽の病院」. 同上)

・Das Leipzig des Lichts und der Gelatine (「光とゼラチンのライプチッヒ」のドイツ語訳. 訳者はPeter Pörtner.)

──── 中国語訳 (chi) :〈光与明胶的莱比锡〉《飞魂》河南大学出版社, 2019. J

・Die augenlosen Gesichter

・Wir sind gerettet

・Ein Gast 

──── 英訳 (eng) : “A Guest”, in Where Europe Begins, New Directions Publishing, 2002

 

 

Etüden im Schnee : Roman  (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2014) 

長篇『雪の練習生』(新潮社, 2011年) のドイツ語版. 日本語からドイツ語へと自己翻訳した小説はこれが初. 

──── 中国語訳 (chi) :《雪的练习生》吉林文史出版社, 2012. J

──── 英訳 (eng) : Memoirs of a Polar Bear, New Directions, 2016. G

──── フランス語訳 (fra) : Histoire de Knut, Verdier, 2016. G

──── イタリア語訳 (ita) : Memorie di un'orsa polare, Guanda, 2017. G

──── オランダ語訳 (dut) : Memoires van een ijsbeer, Bruna Uitgevers, 2018. G

──── スペイン語訳 (spa) : Memorias de una osa polar, Editorial Anagrama, 2018. G

──── アイスランド語訳 (ice) : Etýður í snjó, Angústúra, 2018. G

──── デンマーク語訳 (dan) : En isbjørns erindringer, Grif, 2018. G

──── トルコ語訳 (tur) : Bir Kutup Ayısının Anıları, Siren Yayınları, 2018. G

──── スウェーデン語訳 (swe) : En isbjörns memoarer, Bokförlaget Tranan, 2019. G

──── ポルトガル語訳 (por) : Memórias de um urso-polar, Todavia, 2019. G

──── フィンランド語訳 (fin) : Muistelmat lumessa, Fabriikki Kustannus, 2019 G

──── ウクライナ語訳 (ukr) : Мемуари білих ведмедів, Видавництво, 2019.  G

──── 韓国語訳 (kor) :『눈 속의 에튀드』현대문학, 2020. J

──── ハンガリー語訳 (hun) : Egy jegesmedve emlékiratai, Jelenkor Kiadó, 2020. G

──── チェコ語訳 (cze) : Vzpomínky ledního medvěda, Dybbuk, 2021. G

 

 

Die Lücke im Sinn : vergleichende Studien zu Yoko Tawada (Tübingen : Stauffenburg Verlag, 2014)

多和田葉子論集. „Olympia, ich und die Schrauben in uns“ 所収. 

 

 

Eine Welt der Zeichen : Yoko Tawadas Frankreich als dritter Raum

Mit dem "Tagebuch der bebenden Tage" und zwei weiteren Originaltexten (München : Iudicium, 2015)

多和田葉子論集. „Von Pianissimo bis Forte“,  „Lévi-Strauss und der Hase“, „Tagebuch der bebenden Tage“ 所収. 

 

 

多和田葉子 / Yoko Tawada『一詩一書 : A Poem for a Book』(Hong Kong : CUHK Press, 2015)

・線から生まれた人々 (中国語訳 :「自線而生的人們」, 英訳 : “People Born of Lines”, 併録) 

・Einladung zur Boston Tea Party (中国語訳 :「獲邀去波士頓茶會」, 英訳: “Boston Tea Party“ 併録)

・Ich wollte keine Brücke schlagen (中国語訳 :「我不想起一座橋」, 英訳: “I Didn't Want to Bridge Anything“ 併録)

・Der Hafenpilz (中国語訳 :「海港蘑菇」, 英訳 : “The Harbor Mushroom“ 併録)

・ein gedichtfuer ein Buch (中国語訳 :「一詩一書」, 英訳 : “a Poem for a Book“ 併録)

・Ges-ICH-ter (中国語訳 :「我臉有眾」, 英訳 : “v-I-sages“ 併録)

・Die Rosinenaugen (中国語訳 :「葡萄乾眼睛」, 英訳 : “Raisin Eyes“ 併録)

 

 

Ein Balkonplatz für flüchtige Abende (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2016) 

・Vorspiel

──── 日本語訳 (jpn) : 「つかのまの夕べのためのバルコニー席 (抄)」『早稲田文学』18号, 2017年. 訳者は松永美穂 (Miho Matsunaga).

・Der erste Nachtgesang

──── 日本語訳 (jpn) : 「つかのまの夕べのためのバルコニー席 (抄)」, 同上.

・Männliche Melancholie

・Der zweite Nachtgesang

・Ewige Jugend

・Eine kosmische Kneipe

・Der Club des Nordens

・Der dritte Nachtgesang

・Mit spitzen Ohren

・Mexikanische Pillen

・Hinter-Europa

・Wer mich gebar

・Nicht-Mehr

・Der Frohsinn

 

 

Akzentfrei (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2016) 

ノルウェー語訳 (nor) はUten aksent, Solum Bokvennen, 2021.

・In einem neuen Land: Setzmilch

・Transsibirische Rosen 

・Akzent

・Schreiben im Netz der Sprachen

・Ein ungeladener Gast

──── フランス語訳 (fra) : « Un hôte pas invité », dans, LASSALLE Didier et WEISSMANN Dirk (éd.), Ex(tra)territorial: reassessing territory in literature, culture and languages, Rodopi, 2014

・Jeder Fisch mit Schuppen hat auch Flossen

・Nicht vergangen: Die unsichtbare Mauer

・Wort, Wolf und Brüder Grimm

・Ein Loch in Berlin

・Halbwertzeit 

・Namida

・Über Knut

・Französischer Nachtisch: Roland Barthes als Spielbühne

・Claude Lévi-Strauss und der japanische Hase

──── 日本語訳 (jpn) : 「クロード・レヴィ=ストロースと日本の兎」『早稲田文学』18号, 2017年. 訳者は松永美穂 (Miho Matsunaga). 

 

 

Le Sommeil d'Europe (Lille : La Contre Allée, 2018) 

未発表のドイツ語短篇 Wie schläft Europa? のフランス語訳. 訳者はBernard Banoun. 

 

 

Sendbo-o-te : Roman (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2019) 

長篇『献灯使』(講談社, 2014年)のドイツ語訳. 訳者はPeter Pörtner.

──── 中国語訳 (chi) :《獻燈使》, 瑞蘭國際, 2017. J

──── 英訳 (eng) : The Emissary, New Directions, 2018. J

──── 韓国語訳 (kor) :『헌등사』자음과모음, 2018. J

──── オランダ語訳 (dut) : De laatste kinderen van Tokyo, Signatuur, 2019. J

──── タイ語訳 (tha) : ผู้อัญเชิญไฟ, กำมะหยี่, 2019. J

──── チェコ語訳 (cze) : Emisar, Dybbuk, 2019. J

──── トルコ語訳 (tur) : Tokyo'nun Son Çocukları, Siren Yayınları, 2020. J

──── スウェーデン語訳 (swe) : Sändebudet, Bokförlaget Tranan, 2020. J

──── ノルウェー語訳 (nor) : Sendebudet, Solum Bokvennen, 2020. J

──── アイスランド語訳 (ice) : Sendiboðinn, Angústúra, 2020. G

──── デンマーク語訳 (dan) : Udsendingen, Grif, 2021. J

 

 

Paul Celan und der chinesische Engel : Roman (Tübingen : konkursbuch Verlag, 2020) 

長篇『パウル・ツェランと中国の天使』. 未邦訳. フランス語訳 (fra) が進行中っぽい.

 

 

 

 

【参考文献】

Matsunaga Miho, „Zum Konzept eines « automatischen » Schreibens bei Yoko Tawada”, Études Germaniques, no. 259, 2010 (https://www.cairn.info/revue-etudes-germaniques-2010-3-page-445.htm )

Nguyen Thanh Tam『重訳の再評価の試み―ベトナムにおける日本文学の重訳を中心に―』, Ph.D. thesis, Kobe : 神戸大学, 2016 (pdf: http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/thesis2/d1/D1006554.pdf )

Rigault-Gonsho Tom, Yoko Tawada, ou le Comparatisme. L’œuvre et la critique en dialogue, Ph.D. thesis, Sorbonne Université, 2018 (pdf: https://tel.archives-ouvertes.fr/tel-01956519/document )

Secco Valeria, TAWADA Yōko 多和田葉子 : Écrivaine migratrice, entre frontières géographiques et linguistiques, réelles et imaginaires, des littératures japonaise et allemande contemporaines, Lyon : Université Jean Moulin (Lyon 3), 2018 (pdf: https://scd-resnum.univ-lyon3.fr/out/memoires/langues/2018_secco_v.pdf )

Vaglini Eva, La letteratura performativa di Tawada Yōko, Venezia : Università Ca' Foscari Venezia, 2020 (pdf: http://dspace.unive.it/bitstream/handle/10579/17649/989787-1246170.pdf )

近藤裕子「多和田葉子研究のために」『蟹行』5号, 1995年

谷口幸代「多和田葉子書誌 (稿)」, in : 土屋勝彦, G. A. ポガチュニク 編 『多和田葉子 : 越境文化の中間地帯で書くこと』三恵社, 2004年

────「多和田葉子年譜 (稿)」, ibid.

────「多和田葉子全作品解題」『群像』75巻6号, 2020年

廣瀬陽一「多和田葉子著作・同時代批評一覧」『Criticism』2号, 1998年 ( http://srhyyhrs.web.fc2.com/w4.html )

宝石の国のロリータ/Lolita to Land of the Lustrous

真実と幻覚とは紙一重 俺もそこへ行く ペンと紙をくれ

 

 

 

私の知る限り、小惑星という補助線を引いてナボコフ 『ロリータ』を読み解いたのはマンガ家市川春子が人類初だ。2020年7月に発売された『宝石の国』11巻の特装版特典「図説 僻宇宙 Y-3579203181277圏 1 生命体と文化」(のちに『図説 宝石の国』として刊行)は公式設定資料集としての側面を持つ一方で、ナボコフへのオマージュが隠された言語パズルとなっている。パズルであることすら隠されたパズル。裏門から入る必要がある。「3579203181277」が小惑星番号の組み合わせから成っていることに気づき、「57」がムネモシュネ、「1277」がドロレスの小惑星番号であることを知った私はまずナボコフ『記憶よ、語れ 自伝再訪』を手にとった。この伝記にはムネモシュネという蝶が登場するからだ。『宝石の国』のキャラ名は学名由来のものが多いので「ムネモシュネ 学名」でググってみたらそんな記事がトップに出てきた。読むしかない。『ロリータ』は30ページくらい読んでいた。ロリータが登場する前に挫折したが、彼女の本名がドロレスだという知識はあった。どこで知ったのかはわからない。文庫裏表紙の内容紹介にも訳者あとがきにも巻末解説にも「ドロレス」は出てこない。Doloresの愛称がLolitaってムリない?って思った記憶だけがある。フィクションを活字で読むのは苦手だけど伝記ならいけるはず。そう思っていた。ナボコフの騙られた記憶をなんとか読み終え、ナボコフ関連の情報を多少ググった後でパズルの解答(下記参照)をツイートした。基本的な読み筋は正しいという確信はあったものの『宝石の国』の読者からはほとんど反応がなくて悲嘆に暮れてる中、著名なナボコフ研究者からRTされた。人文科学系の研究者はラッパー並みにエゴサをする。それは知っていたが、まったく想定外の事態に驚いた。誤配っていうの?なぜか相互フォローになったので、さすがにナボコフの代表作くらいは読んでおかないとまずい。モラルに反する。ちょうどその頃ロリータ・ファッション愛好者のバイブル映画『下妻物語』がアマプラに追加されたので観てみたところだった。深キョンかわいい。言葉遊びや多言語、そしてロリータ服が好きなのに『ロリータ』を読まずにいるのは社会人としての自覚に欠けるのではないか。重なった偶然に背中を蹴られて『ロリータ』読みを再開することになった。

 

イタロ・カルヴィーノによると、古典とは「自分がそれまでに抱いていたイメージとあまりにかけ離れているので、びっくりする」し「だれにも読まれたことのない作品に思える本」らしい(『なぜ古典を読むのか』←須賀敦子の翻訳メッチャいい)。私にとっての『ロリータ』がまさにそうだった。世界的なベストセラーであり文学愛好者に細部を愛撫される作家の代表作であっても、私の目には誰の指紋もついてないように見える箇所が多々あったのだ。論文とか一応チェックしました。何で誰も指摘してないんだ?それとは別種の驚きもあった。私は以前、『宝石の国』にはシャルル・ペローの童話(市川春子が崇拝する澁澤龍彦が訳している)、そしてそれらを原作とするロシアン・バレエ作品「シンデレラ」や「眠れる森の美女」のサンプリングがあること、2020年ネタが仕込まれていることを指摘したり、『宝石の国』の遠い先祖としてレミ・ベローの宝石変身譚『宝石の愛と新たな変身』(これも澁澤が紹介してる)を挙げたりしていた。ロリータ(・コンプレックス)も澁澤案件。あと、博物学の発展と切り離せない大航海時代ね。これらの要素がすべて『ロリータ』内にも見出せたときにはさすがにヒザを打った。『ロリータ』はまぎれもなく『宝石の国』の重要な元ネタだったのです!(`ェ´)ピャー。だからこそ設定資料集にナボコフへのオマージュがナボコフ的に組み込まれているわけだ。画期的なナボコフの解読法を発見したのにそれを公にはせず、そのまま自作のパズルを解く鍵(のひとつ)として採用する。ナボコフを下敷きにした作品は多いが(興味がある人は秋草俊一郎『アメリカのナボコフ 』所収の「日本文学のなかのナボコフ」などをチェックしてみてね)、こんなやり方は誰もしてない。たぶん。斬新な大ネタ使い。そういやラッパーのサトウユウヤって本名じゃなくて佐藤裕也から来てるらしい。何の変哲もない名前にも裏がある。そのパズルを解く過程で小惑星番号の存在を知り、その内のいくつかを記憶していた私は、『ロリータ』を読み終えたその日にドイツの天文学者Max Wolfとその弟子Karl Reinmuthの重要性に気づいた。『図説 宝石の国』の解法はそのまま『ロリータ』解読に応用できる。その成果は前記事にある通りである。

 

市川春子は間違いなく『ロリータ』における小惑星のテーマを見抜き、ヴォルフ(Wolf)を中心とした天文学者たちに注目していた。『図説 宝石の国』の「リュクアオン」はLycaon(英語でwolf)のこと。犬と狼の間に位置するアフリカの野犬リカオンも指す。アフリカ・ラテンアメリカ・蝶・犬・神話・天体の結節点。『ロリータ』のカーナンバー同様、「7361K897年」は5つの小惑星番号が重ねられたものだが(7361、897、736、1008、97)、内2つはヴォルフの発見した小惑星である。真ん中のKは「000」ではなく「千」に置き換える。7361・897を736・1千8・97にすることで、これらも他の数字と同じくナボコフ(作品)や中南米に関係するものだとわかる。Endresだけ浮いてるけど、カタカナにするとエンドレスなんで。ロリータへの愛はフォーエヴァーなんで。よろしく。小惑星1000番Piazziaも入れるなら6つ。ハンバートがロリータと出会った瞬間「Piazza」という声が響く。この小冊子は横書きであるにも関わらずアラビア数字と漢数字を併用しているが、これは数字に仕掛けがあることのほのめかしだけでなく、この暗号を解くヒントにもなっている。『ロリータ』においてもローマ数字が暗号を解く鍵となる。ヴォルフが発見した小惑星をABC順に並べると、Lの項の最初が小惑星1008番La Paz(フォスフォフィライトの名産地として有名なボリビアの首都)で最後が小惑星897番Lysistrataになる。2つのLを重ねるのには理由がある。『ロリータ』は文字通りLolitaから始まりLolitaで終わる(Lolita to Lolita時計のような円環になっている。Lolitaは作中でL.と略されるのだから、Lolita to LolitaをL. to L.と言い換えられるだろう。ナボコフの短篇「重ねた唇」の英題はLips to Lipsで原題はУста к устам(Usta k ustam)である。重ねたL(ips)、L to L、真ん中にK。「7361K897」はナボコフとヴォルフのコラージュなのだ。文学と天文学の異属交配。ヴォルフの見つけたLからはじまる小惑星の最初と最後を重ねることで『ロリータ』の円環を再演し、その2つのLの間(La Paz to Lysistrata)に注意を向けることで読者にロリータを発見させようとしている。コロンブスがスペインからインドへと向かう途中で新大陸にたどり着いたように。あるいはヘリウムとアルゴンの間に「ネオン」を見つけたように。「ネオン」は小惑星336番Lacadiera(リヴィエラにある村の名前に由来。Lolitaは「リヴィエラの恋人」Leighと重ねられる)の存在に気づかせるヒントでもある。市川春子の仕込んだ暗号の規則性さえ理解していれば、天文学者オーギュスト・シャルロワの発見した小惑星331番と337番の間に何かが隠れていると察せられるだろう。ヴォルフの発見した小惑星リストのLの項を頭から順に、La PazからLysistrataへと目をすべらせていくことで読者は小惑星Lola(ドロレスの愛称のひとつ)を発見することになる。ロリータを目にして衝撃を受けたハンバート。スターになるロリータ。その再現。擬態的ヒントと暗号化の両立。ナボコフの愛読者なら誰しも真ん中にぽつねんとあるKを見た瞬間「重ねた唇」を想起するだろう。知らんけど。

 

ちなみに『宝石の国』でロリータ服をよく着ているカンゴームは、灰色の粉に覆われた星(=グレイ・スター)で唇を重ねる。『宝石の国』は言うまでもなく博物学を主要モチーフとしているが、最近中国のロリータ・ブランドから『本草綱目』に描かれた植物とその説明文を柄にした服が出たので興味深い。「フォスフォフィライト」は「ゴスロリ最高」と韻を踏む。ロリータ・ファッションにはくまさんモチーフもかなり多いので、私が前回書いたロリータ=こぐま説は既に業界の常識であった可能性も捨てきれない。シャーリー・テンプルすらロリータ・ブランド名にされている。あなどってはいけない。ノーマークのポジションで最強は羽根をのばす。仮題が「The Kingdom by the Sea」(ポーの詩「アナベル・リー」に由来)だった『ロリータ』においてもロリータがリンネのようにL.と略されるし、ハンバート(Humbert)はフンボルト(略称がHumb.)を含む。ロリータとハンバートが一緒に観た西部劇はロアリング峡谷が舞台だが、これはカリフォルニア州ハンボルト(Humboldt)郡にある。郡庁所在地はユーレカ(Eureka)。Ceresをはじめとする小惑星への言及があるポーの宇宙論ユリイカ(Eureka) 』はアレクサンダー・フォン・フンボルト(Humboldt)に捧げられている。ユリイカ=発見もまた『ロリータ』の重要な主題だ。道化(bouffon, buffoon)の主題はビュフォン(Buffon)につながるだろう。ロリータへの思いを込めたハンバートの詩にはユゴー「王は愉しむ」の引用がある。道化が主人公のこの戯曲を原作とするオペラの仏訳が『Rigoletto, ou Le Bouffon du prince』。3人の大博物学者の名前が隠れている『ロリータ』には植物や動物の他に鉱物もたくさん登場する。三界→ Three Kingdoms →三国時代→月・海・丘。1943年にアリゾナでMichael Fleischer(→Fleischmann→Flashman)らによって発見されたラムスデル鉱(Ramsdellite)はアメリカの鉱物学者Ramsdellに因む。ロリータの住む家はRamsdaleのLawn街にある。Lawnはリネン(リンネのアナグラム)やコットン製の薄い生地のことで、シャルルマーニュの母Berthe(女装したハンバートの名前)の出身地Laonに由来する。ヨーロッパの父方のおばあちゃん。また、分類階級のKingdom(界)、Phylum(門)、Class(綱)、Order(目)、Family(科)、Genus(属)、Species(種)も作中に散りばめられている。ただしPhylumは複数形のphylaになってるので単なる偶然かもしれない。言葉遊び好きがこういう言及をしているときはその人自身も何か仕掛けている場合が多い。ナボコフが短篇「ヴェイン姉妹」でアクロスティックについて触れた際に自分もこっそりやってみせたように。『ロリータ』にもその手のヒントがけっこうある。「え!?いきなり何言い出したのこの人???」ってなったら要注意だ。

 

ついでに大航海時代もいっとこか。『ロリータ』に記された地名はコロンビアに始まりアラスカで終わる。コロンビアはもちろんコロンブスに由来し、Columbusはcolumba(鳩)から。『プニン』でナボコフはシンデレラの靴をcolumbaに結びつけている。コロンブス(そしてペロー)以前のシンデレラにはカボチャ(中南米原産)の馬車は出てこなかった。ジャガイモやタバコといった中南米の植物は博物学や人々の生活だけでなく物語も一変させた。灰かぶりを意味するシンデレラと重ねるように、タバコの灰でいっぱいのヘイズ家でハンバートはロリータと出会う。いろんな要素が詰め込まれたこの重要な1部10章にはバハマという地名も出てくる。コロンブスが到達した最初の島サン・サルバドル島がある国だ。ハンバートは第1部8章の終わりにヴェネツィアやコロンビアの名前を出した後、9章冒頭でポルトガルからアメリカに渡ったと語る。ジェノヴァ出身でスペインからアメリカに向かったコロンブスを連想させる。さまざまな場所をめぐり(cruise)多くの地名を挙げていく彼が最後に言及するのはスキラー夫妻が向かったアラスカである。アジアとアラスカが地続きでないことを1648年に発見したロシアの探検家デジニョフが上陸していたかもしれない、アメリカ大陸北西部最果ての地アラスカ。大航海時代(Age of Discovery)の終わりをいつにするかは諸説あるし、ロシア出身のナボコフがどう認識していたかは不明だが、増田義郎のようにデジニョフの発見を以って終わりとする学者もいる。クリストファー・コロンブスからセミョン(Семён)・デジニョフへ。Coast 2 Сoast。

 

中米パナマにはコロンブスの子孫が代々治めていたベラグア公爵領がある。湿度がとても高い地域だ。Veraguaはスペイン語のver(見る)とagua(水)に分けられる。コロンブスがこの地に到着するときに暴風雨(agua)を目の当たりにしたこと(ver)、そして船員たちの服が湿気でカビまくってたこと(averagua)からその地名がつけられたという俗説がある。「アベラグア」は現在コスタリカからエクアドルにかけて、特にコロンビアで使われる地域語である。コロンビアを代表する作家ガブリエル・ガルシア=マルケスの全著作の中でもたった2回しか登場せず、日本の翻訳者が2人も訳し漏らす程度にマイナーな言葉だ(邦訳「土曜日の次の日」参照)。にも関わらず『宝石の国』には「あべらぐあ」が出てくる。作者が中南米博物学関係の資料を漁ってるうちに植物学者バートホルト・カール・ジーマンの航海記を知り、そこで目にしたのだろう。コロンブス大航海時代博物学中南米、植物、言葉遊び。読者が「averagua」をググることで『宝石の国』が何を下敷きにしているのかが一発でわかる。そういうヒントになっている。誰がわかんねんってヒント。実際、月人たちの名前は大航海時代に植民地化された地域の虫や植物に由来するものが多い。私のつぶやき参照。「セミ」のスペイン語はcigarraでcigarro(葉巻・紙巻きタバコ)とよく似ている(実際、セミは煙となり宙を漂う)。古いスペイン語ではオスの蝉をcigarroと呼ぶ場合もある。セミと対になってるアペはイタリア語だとミツバチの意味。アメリカの語源になったアメリゴ・ヴェスプッチの苗字もスズメバチ(vespa)から来ている。『ロリータ』内でも重要な場面で蝉が鳴き、蜂が飛ぶ。全然関係ないけど「打ち水」も出てくる。アメリカでもやってんじゃん。さらに関係ないけど、ヨーロッパの映画にも蝉の鳴き声が聞こえるものがあるので、興味がある人はユスターシュ監督作品の『ぼくの小さな恋人たち』をご覧あれ。南仏が舞台。リヴィエラあたりでもうるさく鳴いてそう。こういう本筋から外れた小ネタは読む人の関心によってなまら役立つ情報に化ける。種が種を生み、予想しない誰かのもとで花を咲かせる。それはさておき、煙と灰を出すタバコも重要アイテムだ。ジャガイモに関しては、掲載誌月刊アフタヌーンの欄外コメントに「インカのめざめ」が出てくる。ついでに言うと、「流氷」は2話の時点で欄外に名前が出されている。怪しいね。

 

『図説 宝石の国』ではインカなど中南米先住民族の言葉だけでなく、他地域の少数言語も現れる。「タオンテル」も「あべらぐあ」同様、言葉の意味自体が重要なんじゃなくて、載っているテクストやその背景が重要なのです。ググるとすぐ出典がわかる親切設計。まぁ、意味はわかっても意図はそうそうわからんのやけど。「あべらぐあ」に関しては『ロリータ』の「斑」のモチーフにつなげられなくもないが。読者はひたすらdigるしかない。話者が1000人しかいないパプア・ニューギニアの言語Seimatに訳された聖書に「taon tel」が出てくる。「taon」は英語「town」の借用語、「tel」は英語の「a」くらいの意味で、「ある町に、神を恐れず、人を人とも思わぬ裁判官がいた」(ルカによる福音書18:2)の一部。「エンマ」を想起させる(ちなみに『ロリータ』においてもエンマ・ボヴァリーへの言及がある。また、シャルロワは小惑星Emmaの発見者でもある)。「イフ・パラウム(Ihu Paraumu)」はマオリ語で鼻・腐植土(humus)の意味。イエズス会の宣教師が使用していた古いスペイン語からの借用語としてのIhuはJesusを指す。イエス・キリスト(Ihesu Xpisto)を略したIhu XpoのIhuである。イフによるエキスポとしての『図説 宝石の国』。創世記では人間(Adam, human)は土(Adamah, humus)から創られる。アダムは赤い(アードーム)土から来ているという説もある。ダイヤモンドは古代ギリシア語でadamasなので、赤い土からできた最初の人間アダムと最初の宝石レッドダイヤモンドを重ねることも可能だろう。黄色・無色・黒のダイヤモンドは人種、緑は新たな人間となったフォスに対応する。ルイス・ギンズバーグユダヤの伝説』によると、神は4色の塵からアダムを作り、赤は血、黒は内臓、白は骨と血管、緑は肌になったらしい。「人間の誕生」と「赤」つながりで言うと、女性器は古代中国で辰砂の洞窟(丹穴)と呼ばれていた。澁澤龍彦はタオイズムを鉱物愛と滅亡愛、そしてSF的幻想と結びつけている(「鉱物愛と滅亡愛」)。道教における辰砂の重要性は言うまでもない。辰砂は硫化水銀から成る。スペインに植民地化された中南米の銀山では、水銀を駆使したアマルガム法によって従来の灰吹法(酸化鉛 Lithargeを作る)より多くの銀を産出することに成功した。シンシャはこの水銀を体液とする。経血のように制御しきれない体液でまわりを汚(穢)すことを恐れるシンシャは洞窟にこもる。女陰のような洞窟の入り口から見える月はどんどん上がっていく。月(経)が消えると今度はフォス(=新たな人間)が逆向きで顔を見せるのだ。福音書は英語でEvangelion、創世記はGenesisである。これに「ネオン」を加えるとNeon Genesis Evangelionとなり、2020年ネタになる。『宝石の国』11巻発売の時点では、新劇場版エヴァの完結作は2020年公開予定だった。『ロリータ』もエヴァ同様聖書ネタに満ちていて、「リリス」が重要なモチーフである。2020年に開催予定だった東京五輪ネタも『図説 宝石の国』にある。本編にも。「2020年」は『ロリータ』にも登場する意味深な数字だ(気になる人は前記事参照)。にもにも。河出ペーパーバックス版『ロリータ』(1962)の装丁を担当した原弘は東京五輪(1964)のポスターの文字デザインも手がけている。『インディヴィジュアル・プロジェクション』で阿部和重がやったように、市川春子もまた2つの東京五輪を重ねているのではと思っていた私は、秋草俊一郎「日本人はナボコフをどう読んできたか―『ロリータ 』を中心に―」を読んでロリータと旧東京五輪の結び目を知り衝撃を受けた。2つの東京五輪を別のしかたでゆるやかにつなぎ直す『ロリータ』。最初はオリンピア・プレスから刊行されたことも考えると、『ロリータ』はオリンピック(オリンピアに由来)と不思議な縁がある。そのことを踏まえての「五輪ネタ」だろうか。仏教で五輪というと地・水・火・風・空のことだが、これらのモチーフは『ロリータ』においても頻出する。(ここ付け足し予定)。前回の記事「小惑星ロリータ」は「市川春子は『ロリータ』をどう読んでいたか」を私が勝手に汲み取って書いたものである。札幌からムツゴロウ並みに裏の裏を読む漫画家は、空前のスケールでぶつかり合う惑星を背に新たな覚醒を待っていた。ひらめきの喜び、発見の驚きを智慧の輪ひとつで表す試み。私はただそれに応えただけだ。そこで新たな星と方程式を見つけた。小惑星のテーマ群を除いた言葉遊びに限っては私の独創だが、それも『図説 宝石の国』によって『ロリータ』解読のヒントが(こっそり)出されていなければ存在しえなかった。ちなみにY-3579203181277の「Y」は小惑星の仮符号だと12月後半を指します。クリスマス・シーズン。ナボコフの自伝でムネモシュネが描かれている地図の中心にある川もY字型。第一発見者である私Yaoraの頭文字でもある。¥。複数のY。Ys。Yuya Sato。(`ェ´)ピャー

 

 

ということで、前置きが多少長くなりましたが『図説 宝石の国』解読ツイートを転載しておきます。予定の半分くらいの分量だけど、需要が特にない感じなんで後編はボツです。気になる人は中南米の銀山とか産業革命とか大陸移動説とかその辺自分でいろいろ調べてみてね。スペイン語の辞書を引いたりして。これを書いた時点では短篇「オーレリアン」と自伝しかナボコフ作品を読んでなかったので、「ムネモシュネ」や「2人の植物学者」が『ロリータ』に出てくることとかコート・ダジュールリヴィエラだとか知りませんでした。幼年期の太陽が沈む場面に登場する「虻」はフランス語で「タオン」、「丘」は中東の言葉で「テル」だとかも。「タオン(طاعون)」はアラビア語だと疫病(ペスト)。疫病ももちろん2020年ネタではあるし、喫茶店名に使われたリサージ(密陀僧→密だそう)とつなげようと思えばつなげられる(けど本筋は別にある)。アトロニウェア(ラテン語で黒・白)はブランチ・シュヴァルツマン(白・黒)やメラニー・ヴァイス(黒・白)に通じることとかも。あと『賜物』は原典だと母に捧げられてるのとか。小惑星番号もこれを書く数日前に知りました。カメノコハムシはたまたまtwitterで見かけた虫にピンときてその仲間を調べてみただけです。虫きらいなのに。いつもはツノゼミの写真を上げてるフォロイーさんがバナナ色のGをツイートしてて、その数時間後に黒いのがうちに出てみごと伏線回収したので八つ当たりでブロックしにいった時に目にして、「これだ!」って。そんな偶然と付け焼き刃の集合体です。

 

小惑星ロリータ, or Mistarry Doloress

ナボコフ 『ロリータ』のネタバレを含みます。カッコ内のページ数は若島正訳『ロリータ』(新潮文庫)のものです。

 

 

 

きみの名前には半ばムネモシュネー半ば星のゆらめきがある  ──ナボコフ 『賜物』

さまざま星座のいかなる諸相が順次考察されたか?  ──ジョイスユリシーズ

時がくれば銀河を繰り出し大熊を小熊と共に導き出すことができるか。  ──ヨブ記38:32

タマルは灰を頭にかぶり、まとっていた上着を引き裂き、手を頭に当てて嘆きの叫びをあげながら歩いて行った。  ──サムエル記下13:19

光はその玻璃(ガラス)を辷(すべ)りおり、滴って緑色の水溜まりを作る。  ──ヴァージニア・ウルフ「青と緑」

一つ一つの言葉は、何本もの道路が交叉する四つ辻のようなものなのである。  ──クロード・シモン『盲いたるオリオン』

切り裂き魔、霧吹き魔  ──CQ (from BUDDHA BRAND『人間発電所(Original '95 Vinyl Version)』)

Bear with me!  ──ナボコフ 『ロリータ』

 

 

 

『ロリータ』の著者として知られるウラジミール・ナボコフは、鱗翅類の研究者でもあった。歳の遠く離れた男性を魅惑する914歳の少女をニンフェット(nymphet)と呼ぶハンバート・ハンバートの歪んだ回想記であるこの小説によって富と名声を得て専業作家へと転じる前には、ハーヴァード大学比較動物学博物館でシジミチョウ科(Lycaenidae)やタテハチョウ科(Nymphalidae)、ジャノメチョウ亜科Neonympha属などの研究をしていた。特にヒメシジミ亜科の形態や分類に関する研究の評価が高く、ヒメシジミ族の蝶にはナボコフや彼の作品にちなんだ学名がいくつもつけられている。『ロリータ』の「中枢神経」の一端を担う小灰蝶Lycaeides sublivens Nabokovは彼自身によって発見された。

ナボコフは今日も宙を飛ぶ。

 

 

ナボコフの名がせられたのは蝶だけではない。チェコ天文学者Antonín Mrkosは、後にクレット天文台の同僚となるJana Ticháの提案を受け入れ、1985年に発見した小惑星7232番の星にNabokovと命名した。また、ナボコフとは直接関係ないが、彼や愛妻のファーストネームと同じ名前を持つ小惑星もある。小惑星1724番Vladimirと245番Veraがそうだ。スペルは違うが小惑星1302番Werraもドイツ語読みでヴェラである。

 

 

「星」といえば、『ロリータ』の訳者である若島正が『ロリータ、ロリータ、ロリータ』で強調したように、この小説には「明らかに「星のテーマ」と呼ぶべきものが存在している」。映画スターに憧れるロリータことドロレス・ヘイズの同級生にはStella(イタリア語で星)がいるし、人の身ぶりにも星に関係する修辞が用いられる。ドロレスがスキラー夫人として最期を迎えるグレイ・スターは、ナボコフ自身によって「作品の首都」と呼ばれている。

若島の指摘した箇所以外にも「星のテーマ」を成すものはそれこそ星の数ほどある。

日が暮れだすと現れる星のように、小説が終わりに近づくにつれてぽつりぽつりと姿を見せる花アスター(aster。ギリシア語で星)は小惑星(asteroid)を想起させる。その連想を保持したまま「記憶の女神ムネモシュネ」という言葉を目にすると、ナボコフの自伝に登場する蝶(Parnassius mnemosyne)だけではなく、小惑星57番のMnemosyneも頭をよぎるだろう。さらに、ハンバート・ハンバートが回想記を書きはじめたのが「56日前」(550頁)であることを知ると、基準となる日を合わせた57日間はムネモシュネの小惑星番号に合わせたものではないかという気がしてくる。ハンバートが獄死した11月16日の56日前は(最も遅い場合)9月22日であるが、この日は小惑星ムネモシュネが発見された日なのだから。母シャーロットによって記録された娘ドロレスの身長も57インチだ(192頁)。この測定が行われた1月1日はドロレスの誕生日であり、小惑星1番Ceresが発見された日でもある。ハンバートが初めてドロレスと出会う瞬間にシャーロットが口にした「the piazza」(69頁)は、この最初の小惑星を発見したイタリアの天文学者Giuseppe Piazzi、そして彼の名に由来する小惑星1000番Piazziaを喚起させる。

若き日のPiazziに天文学を教えたのはフランスの天文学者Joseph Jérôme Lefrançois de Lalandeであるが(小惑星Ceresの観測結果は彼にも送られている)、ナボコフ訳『エヴゲーニイ・オネーギン』の注釈にはこのde Lalandeへの言及がある。『賜物』や『処刑への誘い(断頭台への招待)』に記されるPierre Delalandeは彼の名に由来するのだろう。ドロレスを形容する「landlady」の文字順を入れ替えるとde Lalandとほぼ同じになる。Pierreは『ロリータ』においてメルヴィル海峡の岬の名前として現れるし(59頁)、道化師(pierrotはpierreから派生)の主題にもつながる。キリストの使徒ペテロに由来するPierreはPeter同様石や岩を意味する。『ロリータ』の登場人物で最も影の薄いピーター・クリストフスキイ(Krestは十字の意味)の名前が出る前後には石が現れる(ピーターの正体が気になる人は若島正『乱視読者の新冒険』所収の「電子テキストと『ロリータ』」参照)。アワーグラス湖のビーチでハンバート夫妻とジーン・ファーローが会する場面でのことだ(159頁)。シャーロットが事故死した翌日、ハンバートはドロレスと自分の血がつながっていることを匂わせるべくファーロー夫妻にある写真を見せる(178頁)。1934年4月に撮られた、大岩に座り髪をなびかせる愛人シャーロット。小惑星Peterが発見されたのは1934年4月4日である。

 

 

天体観測を続けよう。

ドロレスが母と暮らしていたヘイズ家はラムズデールのローン街342番地にある。シャーロットの死後、ハンバートと共にアメリカを旅してまわることになったドロレスが初めて彼と寝ることになるホテルの部屋は342号室(212頁)。彼女の失踪後にハンバートが記帳した宿泊施設の総数も342であった(439頁)。

小惑星342番はEndymion。ドイツの天文学者Max Wolfによって発見された。名前の由来となったギリシア神話のエンデュミオーンは、元々ドナウ川流域に住んでいたアイオリス人(Aeolian)を率いて海辺の地エーリスに渡り、そこでとなった。50人を超える子供の多さ(ナルキッソスが特に有名)、水のニュンペー(Nymphe)や月の女神セレーネーとの恋で知られる。エンデュミオーンが老いることに耐えられないセレーネーは彼の不老不死を願う。その結果、エンデュミオーンは若さを保ったまま永遠の眠りにつくことになる。

ハンバートはドロレスを筆頭とするニンフェットの不老を強く願っていた。1952年に17歳で死を迎えるのだから、彼女もまたそれ以上老いることはなくなった。ドロレスはエンデュミオーンと重ねられ、「342」は彼女の眠る場所と結びつく。342号室での出来事が描かれる章では、エンデュミオーン同様、老いることなく眠り続ける「眠れる森の美女」のアリュージョンもある。

宿泊施設342件に記帳したとハンバートが明かす第2部23章では、台帳に車の変わったナンバーが記されている。『詳註ロリータ』でアペル・ジュニアが言うように、「WS1564」や「SH1616」はウィリアム・シェイクスピアのイニシャルと生没年に因むし、「Q32888」と「CU88322」の数字を足すと52になる。シェイクスピアの誕生日を4月23日とした場合、52歳の誕生日に彼は亡くなった。52は『ロリータ』で頻出する数字である。ドロレスに捧げたハンバートの詩の行数やクレア・クィルティのシナリオ作品数が52であるだけでなく、彼らの没年もまた1952年なのだ(ちなみに訳者の若島正も1952年生まれ)。この小説内にはルイス・キャロルや彼の作品へのアリュージョンがいくつもあることから、52は『不思議の国のアリス』に登場するトランプにも関連づけられる。また、小惑星52番はEuropaであることから、ヨーロッパとの重ね合わせも考えられるだろう。しかし、ここで問題にしたいのは、なぜ2・3・8をこの順番で並べたかである。単に足して52になる数字を用意するだけなら3種類に限定する必要はない。配置の仕方も適当でいい。だがナボコフがそんな雑な仕事を自分に許すだろうか。確たるクオリティ・コントロールを貫徹する彼が?ここで鍵となるのはやはり小惑星である。

小惑星Endymionを発見したMax Wolfは他にどんな星を発見したのか見てみよう。小惑星328番Gudrun、888番Parysatis、889番Erynia、883番Matterania、832番Karin、323番Brucia…。ハンバートの言うように、「ナンバーは、たえず形を変える」。娘の身体測定値にこっそり1を加えたシャーロットのように、「Q32888」と「CU88322」の最後の数字を増やしてみよう。するとWolfが発見した小惑星の番号を重ねた数字になる。Q32/8/89、CU88/3/23。QやCUは小惑星の仮符号に使われる文字で発見時期や順番を示す。

ナボコフ自身が訳したロシア語版『ロリータ』では車のナンバーが「КУ6969」と「КУКУ9933」に変更されている。このヴァージョンでは「キャンプQ」が「Кувшинке(ロシア語でスイレン。学名Nymphaea)」と呼ばれ、「Ку(Ku)」と略される。この略語はクレア・クィルティ(Куильти)の愛称でもある。国を移るとCからKに変わるのは温度を連想する。「意味不明な華氏を子供の頃から慣れ親しんだ摂氏」(424頁)に直したハンバートに倣って華氏を摂氏にしてみよう。6969℉は3853.889℃、9933℉は5500.556℃。先ほどの逆でナンバーから1を引いてみると、6968℉は3853.333℃、9932℉は5500℃になる。小惑星385番Ilmatar、小惑星333番Badenia、550番Senta、500番SelinurもやはりWolfが発見したものである。これらの小惑星番号を重ねたものを摂氏とし、さらに華氏に変換した後で1を足したものがロシア語版のカーナンバーになっている。

ハンバートの命日である11月16日はWolfが小惑星Senta、Ortrud、Naëma、Vigdis(小惑星番号1053)を、コロンビア特別区でPetersがWashingtoniaを発見した日でもある。

これらの「言及は、もちろん役に立たない」。とはいえ、Wolfが見つけた他の小惑星に目を向けたことは非常に有益であった。彼は小惑星Lolaの発見者だったのだ。

 

 

ローラことドロレスの母シャーロットはハリウッド・スターのマレーネ・ディートリヒにどこか似ている。ディートリヒは映画『嘆きの天使』(1930)のヒロインを演じた。その役名がLola Lolaである。顔は母へ、名は娘へ。同じ名前が2度繰り返されるのはハンバート・ハンバートに通じる。Humbertは自身の名前をさまざまな形に変化させるが、そのひとつにHamburgerがある。Wolfは小惑星Hamburgaの発見者でもある。

同じく1930年公開の映画『ジャズ・シンデレラ 』ではJason Robards Sr.がHerbert Carter役を演じた。シンデレラは灰を意味するCinderに指小辞ellaをくっつけた名前だが、Wolfの発見した小惑星にもEllaがある。これは由来不明とされているが、発見者の1人であるA. Schwassmanのイニシャルを合わせたAschが低地ドイツ語で灰を意味することから、おそらくシンデレラに掛けているのだろう。Jason Robards Sr. を略すとJ.R. Srになり、『ロリータ』の序文を書いたJ.R. Jr.に近づく。ただしこの名前が使われるようになったのは、彼の息子Jason Robards Jr.が有名になってからのようだ。ロシア語版『ロリータ』ではJohn Ray Jr.からJr.が省かれているのだから、Sr.のないJ.R.でも問題ないだろう。

『ジャズ・シンデレラ』においてJ.R.演じるHerbertはDorothy Phillips演じるMrs. Consuelo Carterと親子関係にあるが、ハンバートと親子になったドロレスはビアズレー女学校校長からドロシーと呼ばれる。小惑星339番Dorotheaと341番CaliforniaはWolfによって9月25日に発見された。

1930年のジャズとシンデレラといえば、コロムビア・レコードから出たCharleston Chasersの『Cinderella Brown』もある。J.R. Jr博士の親友であり、コロンビア特別区法曹界に在籍するClarence ChoateClarkと所属や3Cが共通している。ちなみにジョン・キーツに強い影響を与えた人物にもCharles Cowden ClarkeLeigh Huntがいる。Charleston ChasersにはHarold "Scrappy" Lambert(縮めるとHambertになる)というボーカルがいるが、ドロレスの父ハロルド、そして『ロリータ』最終章でハンバートの筆名候補として挙がるLambert Lambertと同じ名前である。小惑星187番Lambertaの発見者は残念ながらWolfではなかった。

 

 

Max Wolfは天体写真を利用して小惑星探索を行う方法を確立した。これによって小惑星の発見速度が一気に上がった。肉眼観測で多くの小惑星を見つけていたオーストリアのJohann PalisaやフランスのAuguste Charloisを抜いて一時は最大の発見者となったが、やがて弟子(pupil)のKarl Reinmuthにその座を譲ることになる。

この4人の天文学者が発見した小惑星の中で興味深いものを列挙してみよう。

 

List of discovered minor planets

by Max Wolf

Carmen、Chicago、Laura、Lola、Kreusa、Violetta、Salome、Selene、Agnes、Clara、Seraphina、Nymphe、Ricarda、Richilde、Rosalinde、Elisabetha

 

by Karl Reinmuth

Li、Alstede、Piazzia、Sirene、Marlene、Christa、Arcadia、Magnolia、Viola、lilium、Tulipa、Ithaka、Margo、Rita、Atlantis、Aster、Sicilia、Nocturn、Margret、Hill、Brown、Peter、Beethoven、Klare、Wild、Carol、Chambers、Hermes、Werra

 

by Johann Palisa

Scylla、Kallisto、Rosa、Russia、Carolina、Lameia、Augusta、Huberta、Anna、Philia、Alice、Tamara、Misa、Melanie、Hammonia、Nora、Wolfiana、Scott

 

by Auguste Charlois

 Emma、Regina、Felicia、Margarita、Pierretta、Rosalia、Magdalena、Columbia、May、Apollonia、Ursula、Tea

 

 

初読時には誰もが読み飛ばすクラスメイト名簿をナボコフは『ロリータ』の中枢神経のひとつに数えている。ドロレスのクラスメイトの名前を文学ではなく天文学に紐づけてみよう。小惑星が重要な参照元であるならば、彼女たちの名前にも関わってくるはずだ。

 

 

Angel, Grace → 小惑星Angelina、Angelica

Austin, Floyd

Beale, Jack

Beale, Mary

Buck, Daniel

Byron, Marguerite → フランスの天文学者Marguerite Laugier (小惑星Riviera、Jean-Jacques、Hugoの発見者)

Campbell, Alice →  アメリカの天文学者William Wallace Campbell、小惑星Alice

Carmine, Rose → 小惑星Carmen、Rosa

Chatfield, Phyllis → 小惑星Phyllis(小惑星Charlotte、Dulcineaの発見者でありMax Wolf門下のPaul Götzにより発見)

Clarke, Gordon

Cowan, John

Cowan, Marion → 小惑星Marion506 smith dugan mabella ada wolf

Duncan, Walter → ドイツのエンジニアWalther Bauersfeld(Max Wolfと共に最初のプラネタリウムを発明)

Falter, Ted → 小惑星Theodore ultima thule 440 talbot

Fantasia, Stella → 小惑星Fantasia

Flashman, Irving

Fox, George → 小惑星Geogia、William Henry Fox Talbot

Glave, Mabel → 小惑星Mabella

Goodale, Donald → 小惑星McDonalda

Green, Lucinda

Hamilton, Mary Rose → 小惑星Hamiltonia、Rosemary

Haze, Dolores → 小惑星Dolores

Honeck, Rosaline → 小惑星Ursula、Rosalinde

Knight, Kenneth

McCoo, Virginia 小惑星Skylla、Virginia

McCrystal, Vivian → 小惑星Vivian

McFate, Aubrey

Miranda, Anthony moon 小惑星Toni

Miranda, Viola → 小惑星Viola

Rosato, Emil →ドイツの天文学者Emil Ernest 

Schlenker, Lena小惑星Lena

Scott, Donald → 小惑星Scott、McDonalda

Sheridan, Agnes → 小惑星Agnes

Sherva, Oleg

Smith, Hazel →天文学者Raymond Smith Dugan(小惑星Marion、Mabellaを発見)

Talbot, Edgar → William Henry Fox Talbot(ドーセット出身の語源学者。写真技術の発明者)

Talbot, Edwin 

Wain, Lull

Williams, Ralph → William Henry Fox Talbot、William Wallace Campbell、小惑星Wilhelmina

Windmuller, Louise → 小惑星Louisa

 

 

天体という補助線を引くことで特に輝き出すのはLull Wainである。作中に「lulled by Lo」とあるように、lullはbyとつながりロリータに結びつく。子守唄を意味するlullabyはlullとbyeが合わさったものとされるが、子供の命を奪おうとする悪魔リリスを追い払う言葉「Lilith abei」が由来だとする説もある。ロシア語ではLilithはЛилит(Lilit)になり、Lolitaと同じL-L-Tになる。Karl Reinmuthは彼の発見した小惑星1227〜1234番の名前に「G.STRACKE」というアクロスティックを仕込んでGustav Strackeに敬意を捧げたが、小惑星1066~1070番も頭文字をつなげるとLLTになる。リリスを主題にした詩をロシア語で書き、短篇「ヴェイン姉妹」で達者なアクロスティックを見せたナボコフならまず見逃さないだろう。

小惑星1181番Lilithはフランスの作曲家Lili Boulangerの名に由来する。この星の仮符号は、9月22日にWolfによって発見された小惑星884番Priamusと同じCQである。Clare Quiltyのイニシャルはここから来ているのかもしれない。ナボコフの従兄ニコラスは彼女の姉ナディアと知り合いであり、リリ・ブーランジェ記念基金の委員に名を連ねている。L. Boulangerでアナグラムを作るとL Anger blouになり、前述の映画『嘆きの天使』の仏題L’ Ange bleuに近くなる。

この作品の監督SternbergはLaurence Sterneと同じで星を意味する名前だ。ついでに言うと、『ロリータ』内でやたらトイレが出てくるのは、toiletがetoile(フランス語で星)を連想させるからではないだろうか。ツァーリ(Tsar)もstarのアナグラムである。キリル文字のсはローマ字のsに置き換えられることから、星々(astres)と女優(actress)のつながりが生まれる。『嘆きの天使』でローラ・ローラを演じたマレーネ・ディートリヒの持ち歌に「Lili Marleen」という曲がある。リリとマレーネ小惑星Marleneは彼女の名に因む。この星を発見したKarl Reinmuthは小惑星1825番Klareの発見者でもある。Karlのフランス語形はCharlesであり、その女性形がCharlotte。Lull Wainの苗字は北斗七星を意味する英語で、元の形はCharles' Wain(シャルルマーニュの戦馬車)である。シャーロットの名前は小惑星543番Charlotteだけでなく、北斗七星にも由来するのかもしれない。

おおぐま座の尾の部分にあたる北斗七星は、杓子や(広義の)スプーンのように見えることからBig Dipperと呼ばれる。こぐま座はLittle Dipper。マクシモヴィチ氏に倣ってスプーンの数を数えてみると、ハンバート夫妻の食事の場面でちょうど2本出てくる。ドロレスはスプーンを握らないがSpooneretteと呼ばれる。指小辞etteをlittleに変えればLittle spoonerとなり、Little Dipperに近づく。「Hazer」(135頁)をHazeに直すように、あるいは同級生Violaのお尻を万年筆で攻撃してviolにするように(83頁)、Spoonerからerを消すのもいいだろう。ちなみに「キャンプQ」はロシア語版『ロリータ』で「Кувшинке(スイレン。学名Nymphaea)」と呼ばれるが、この花の中にあるКувшин(水差し)はリトアニア語のkáušas(dipper、big spoon)に由来する。こぐま座には北極星Polarisがある。どこかdoloresに似ている。ドロレスはスペイン語で「痛み」を意味するdolorの複数形だが、ホッキョクグマ(polar bear)の複数形はスペイン語でosos polaresである。バ(bas)がボ(bot)に。6とpと凹面。polaresのaをoにし、pを凹面鏡に写すとdoloresになる。

シャーロットは北極のクマと何度も重ねられ、ドロレスはビアズレー(Beardley)女学校に通うことになる。クラスメイト名簿でドロレスの隣にいるHoneckは小熊に由来する。Milk bar「氷の女王」とbeerの広告。「北極を想わせる青い目」をした夫ディックとドロレスが向かったアラスカ(州都はJuneau)の州旗には北斗七星と北極星が描かれている。ニンフェットの出現しない極地(polar)へと近づいていく。「もっとも美しい」という意味の名を持つKallistoは出産直後にHera(=Juno)によってクマに変えられ、やがておおぐま座になる。母シャーロット(=大熊)に近づいていき、グレイ・スターで子供を産み、星となったドロレス。ドイツでは小惑星CeresをHeraと呼んでいたようだ。Junoの小惑星番号である「3」は作中で最も頻出する数字であり、ハンバートのもとから去った女性に付随して現れる。車のナンバープレートの数字も3種類であった。

 

 

小惑星204番Kallistoを発見したJohann Palisaは小惑星155番Skyllaの発見者でもある(2時5分前!)。スキュラはジョン・キーツ(享年25)の詩『エンディミオン』に登場し、グラウコスとの愛の物語を繰り広げる。エンデュミオーンの神話を大胆に作り変えたこの長大な詩は「A thing of beauty is a joy for ever」から始まるが、ナボコフはこの言葉を『偉業』や『見てごらん道化師を!』で引いている。『エヴゲーニイ・オネーギン』の訳注でも言及がある。『ロリータ』においても『エンディミオン』へのアリュージョンがあってもおかしくないだろう。文学者ハンバートはキーツに関する論文を書いているのだから。ギリシア神話におけるスキュラは元々非常に美しいニンフだったが、魔女キルケーに毒薬を飲まされ、やがて醜い怪物となった。ギリシア神話のエンデュミオーンをなぞるように、スキュラは『エンディミオン』でキルケーの魔法によって美しさを保ったまま水晶宮で永遠の眠りにつかされる。ハンバートに342号室で睡眠薬を飲まされ(その眠る姿は「水晶の眠りに幽閉されている」ようだ)、やがてニンフェットとしての魅力を失っていき、17歳の若さで死ぬドロレス。ナボコフはロシア語版『ロリータ』でSchillerをСкиллер(Skiller)と訳し、シラーではなくスキラーと読ませている。その理由はドロレスとスキュラ(Skylla、Scylla)を重ねるためではないだろうか。スキュラはMcCoo同様「犬の子」を意味する。Lena SchlenkerはCharles‘ Kennel(シャルルの犬小屋)のアナグラムである。Charles=Charlotteを犬とするならその娘は当然「犬の子」だろう。

一方ハンバートは海神グラウコスと重なる。浜辺で偶然見かけたスキュラに一目惚れをしたグラウコスはさまざまなアプローチをするが相手にされない。やがてキルケーに頼り薬の力を借りようとする。ハンバートはパーキントンの繁華街で、「青みがかった灰色の(glaucous)水族館の中を泳ぎまわ」るようにしてドロレスへのプレゼントを選び、睡眠薬の使い途について考えをめぐらせる(194-5頁)。ロリータの娘や孫娘たちと自分の未来の姿を想像した際には、その望遠鏡で「遥か彼方の時間」にいる「青い(vert)老人」を捉える(308頁)。その姿はスキュラの目覚めを1000年待った海の老人グラウコスを連想させる。エンディミオンがグラウコスを遠目に発見したとき、彼は青いマントで老いた身体を覆い緑の生い茂った大岩に座っていた。『エンディミオン』のグラウコスはエンディミオンの双子的存在(two beared bathers!)であり、スキュラとは別の形で彼をなぞる。342号室で眠る資格がある。ちなみに北極にはglaucous gullと呼ばれるオオカモメがいる。ミシガン州マキナックでも観測されているので、ハンバートが連絡船から目にした「大岩に集まる太った鷗」(280頁)がこの鳥であった可能性もある。

 

Glaucusは青緑色や灰色を意味する。ナボコフは『プニン』(1957)でシンデレラの靴はガラス製(verre)ではなくリスの毛皮製(vair)であり、青緑色をしていると書いた。ナボコフ作品におけるシンデレラ・モチーフは『ベンド・シニスター』(1947)から『アーダ』(1969)にかけて現れる。ディズニー映画『シンデレラ』の公開年に書き始められた『ロリータ』にもシンデレラのアリュージョンがある。その重要性を示すように、ナボコフは「シンデレラ」を作品のあちこちに隠している。ドロレスのクラスメイトLucinda Greenの文字順を入れ替えるとcinderelaが現れる。Lucindaの愛称CindyはCinderellaの愛称でもある。灰色(vair)だけではなく緑(vert)もシンデレラと関わりが深い。ドロレスのビアズレー女学校入学の際にハンバートがガストンから借りた灰色の家はヘイズ家とそっくりで、くすんだ緑の日よけ(dull green drill awnings)がある(312頁)。ロシア語版『ロリータ』ではこの日よけが「тускло-зелеными маркизами(dull green awnings)」と書かれていて、drillが失われている。この意味不明なdrillはなぜ英語版で必要とされたのか。それはこの日よけにシンデレラを隠したいからだ。シンデレラはフランス語でCendrillonだが、「green drill awnings」の「een」と「cen」の視覚的類似と「awn」と「on」の音の類似から、「een-drill-awn」を「cen-drill-on」のもじりとして捉えることができる。botのようなbasの発音。

 

『ロリータ』に3回登場する「drill」はどれもドロレスと関わりがある。演技の宿題として出された触覚ドリルを通じてドロレスはナツメヤシの実を拾う想像をすることになる(407頁)。『ロリータ』における日付(date)が重要なことは言うまでもないが、ナツメヤシ(属名はPhoenix)も英語でdate( palm)であり、作中たびたび言及される。聖書で灰をかぶるタマルはナツメヤシを意味する名前であることから、この植物も灰かぶり=シンデレラのモチーフ群に加えられるだろう。シンデレラの起源は古く、ストラボン『地理誌』にも片方の靴をなくしたエジプト人女性ロドピスとその靴を拾い持ち主を探して妻とするファラオの話が記されている。サッポーは彼女のことをドリカと呼んだ。Rhodopisは薔薇色の頬を意味し、Dorichaはメキシコのハチドリ(hummingbird)の属名に用いられる。ドロレスは薔薇で彩られ、行く先々に灰色のハチドリが現れる(278頁)。お嬢さま用靴下とサドルシューズの合計金額は4ドル37セント(466頁)。小惑星437番Rhodiaは薔薇の名を持つニンフに由来する。薔薇はアフロディーテの象徴でもある。この女神への讃歌を代表作とするサッポーは、最も古いエンデュミオーン物語(の断片)である「真夜中の詩(Midnight poem)」の作者とされる。夜空に輝く月とプレアデス星団(プレイアデス7姉妹に由来)からはじまり、「時は過ぎ/私は独り眠る(égo dé móna katévdo.)」で終わるこの詩にはモナがいる。寸劇「魅惑の狩人」の中でドロレスは、自分を森の魔女やの女神ディアーナ(Dianaの小惑星番号78はドロレスの体重と一致する)だと思い込む農夫の娘を演じ、催眠術によって7人の狩人を陥れようとする。しかしモナ・ダールが演じる最後の狩人に魅惑され、彼の目を覚まさせるべく、普通の女の子に戻ることを決める。モナの役は男性だが、少女同士の恋物語にも見えるだろう。ドロレスの役はスキュラやグラウコスを魔法や薬で籠絡するキルケーに重ねられる。キルケーは森の魔女であり、かつては月の女神であったとされる。ドロレスは女優志望だけあって、与えられた役を次々とこなしてゆくのだ。シンデレラ、カルメン、エンデュミオーン、キルケー、そしてスキュラ…。女性の同性愛を意味するsapphicやLesbianはサッポーや彼女の出身地であるレスボス島に由来する。『ロリータ』に登場するサファイア(Sapphoと同じくsáppheirosが語源)やLesterとFabianもサッポーへのアリュージョンかもしれない。サッポーの詩の大半は現存していないが、その断片から元の姿を創造的に復元してみせたのがBliss Carmanの『サッポー:抒情詩百編 (Sappho: One Hundred Lyrics)』(1904)である。その31番目の詩の一節では、鋳造された銀のとろける詩を歌う雲雀の声が死にぎわの者(mortal)に送られようとしている。料金を訊かれたモニークは銀の鈴(melodious silvery precision)や小鳥を思わせる声で「100(Cent.)」と答えた。ハンバートが交渉を持った80人のフランス人娼婦の中で、彼女は唯一本物の快楽を与えてくれた存在だ。モニークの名前の由来を遡るとモナ(μόνα)の原形モノス(μόνος)に行き着く。ちなみにSapphoの小惑星番号は80である。街娼たちは年齢をたずねられると「18歳」と答え、それを日に10回も繰り返す。18×10=180。Cent Quatre-Vingts。One Hundred Sappho。

 

『ペンタメローネ』(Lo cunto de li cunti)の「灰かぶり猫」(La gatta Cenerentola)では「灰」や「片方の靴」はもちろんのこと、ナツメヤシも重要な役割を持つ。Cenerentolaはバレエシューズも意味するようだ。犬好きのナボコフは『ロリータ』でも犬をよく出しているが、そのライバル的存在である猫も密かに登場させている。ニンフェットの特徴のひとつには「かすかに猫に似た頬骨の輪郭」が挙げられる。ドロレスの履くスリッパの上縁は猫の毛皮(pussy-fur)のよう。彼女の行くローラースケート場(каток)の中にも猫(коток)が2匹隠れている。作中でも言及のあるディズニーは、1922年にジュリアス・ザ・キャットという猫のキャラクターを作り、『シンデレラ』に出演させている。このジュリアスの元ネタとも言えるのがフィリックス・ザ・キャット。日本人にもなじみがあるこの猫はオットー・メスマーによって1919年に生み出された。フィリックスの名前はラテン語のfelix(幸福)とfelis(猫)に由来する。Felis the Chat-field。古びたものと灰色の結びつきを思えば、「old cat」と呼ばれるシャーロットも「灰かぶり猫」なのかもしれない。ひと世代前のシンデレラ。ヘイズ氏は靴のコレクターだった。「時計」や「カボチャの馬車」、そして「ガラスの靴」が現れるのはシャルル・ペローのシンデレラからだ。

ドロレスは灰色だけでなく青や緑も帯びることでシンデレラ度を増していく。キャンプ先のHour Glass(砂時計の意味)湖は「時計」と「ガラス」、そして「H(フランス語読みでアシュ)」が詰め込まれ、ロー(水はフランス語でl’eau)で満ちている。防水よ。Hoursの中にours(フランス語でクマ)がいるのも見逃せない。ドロレスがシンデレラならばネズミやカボチャの馬車がお供するはずである。ハンバートが初めてドロレスと出会う第1部10章でシャーロットはさんざん灰を散らす。ヘイズ家の向かいにあるリムジン(Limousin)の中にはmouseが潜む。Charllotteのcharは戦馬車を意味し、彼女の角張った顔(squarish face)にはsquash(カボチャ )の影がある。ドロレス初登場の時点でお膳立ては整っていた。彼女は母亡き後も自転車に乗り、サドルシューズを履き(saddleは馬の鞍も意味する)、時に靴を片方だけ脱ぎ、ハンバートからコーチ指導を受け(coachにも馬車の意味がある)、「リスの轢死体(squashed squirrel)」と口にする。そして口髭の生えた(moustache)著名な(famous)演出家に夢中になり、グレイ・スターで人生の幕を閉じる。

ナボコフはシンデレラをCinder(灰)とElla(小惑星)に分けてそれぞれのテーマを広く展開させた。Cinderはgrey、Ellaはstarであることから、GreystarはCinder-ellaの言い換えだと言える。『ロリータ』の首都である所以である。

 

中枢神経のひとつである「カスビームの床屋(Kasbeam Barber)」でもロリータは灰かぶりであった(gray lotion、must-ache-D)Oleg Shervaはlove gre ashのアナグラム。Glassesもある。シンデレラだけではない。Barberの中にクマが2匹いる(Bär bear)。ナボコフ家の紋章。子供が亡くなったのは30年前。ハンバートの回想記が書かれる30年前に出版された『ユリシーズ』では、死んだ息子ルーディがガラスの靴を履いてブルームの夢に現れる。ドロレスの生まれ故郷ピスキーからの距離も30マイル。小惑星30番Uraniaは天文を司る女神が由来。ムネモシュネの娘で未来予知が得意。泡から生まれたアフロディーテの別名。同性愛者を意味するUranistはこのUraniaから来ている。床屋が口角泡を飛ばしながら語った(bubbled)息子が亡くなったのは1919年。Max Wolfが天体カタログを出版した年だ。小惑星914Aphrodisiac!)番Palisanaを発見してもいる。この星名の由来となったJohn Palisaは小惑星Skyllaの発見者。2人ともクマに関する小惑星の発見者で見事な口髭。Two beard bathers。グラウコスとエンディミオン。Skyllaの語源はwolf同様「引き裂く」、そして「切る」だ。髪の毛を切って殺す。砂浜の散歩が好きなスキュラ。。Beach → B ache → bee ash。子音Bが執拗に繰り返されるのは、この破裂音に何か隠されているから。Bibbidi-Bobbidi-Boo。B。蜂はギリシア語でMelissa。ナボコフアメリカで新種の蝶を見つけてメリッサと命名した。Meliはハチミツ。Med-ocreは黄土色のハチミツ。クマの好物。ロリータの肌。Wolfの発見した小惑星541番Deborahもヘブライ語で蜂を意味する。アメリゴ・ヴェスプッチの苗字も蜂(vespa)。アメリカには蜂がつきまとい、その首都ではが身を潜める。B。ロシア語読みではヴィー。BeaVee。Max Wolfをキリル文字に変換するとМакс Вольф。Макс В。ローマ字に戻すとMaks B。文字の順番を入れ替えるとKas B M。Kas Bee M。Kasbeam。キリル文字とローマ字の混同は他の「中枢神経」でも行われている。イタリック体が手がかりの推理小説キリル文字тの斜体はローマ字mと見分けがつかない。母語がロシア語の人間なら「max」の「m」を「т」の斜体としてまず読んでしまうこともあるはず。ロシア系taxi運転手のMaximovich。彼の名前もまたMax Wolfから来てるのだろう。Is “Max” the keyword? PixieがPiskyになるように、Maxはmaskになる。Black mask's wolf-like profile。Макс В→ Мак с В→ McC V。McCoo、McCrystal、McСудьба(ロシア語で運命)。華氏(℉)を摂氏(℃)に。

運命の女神にちなむ小惑星Fortuneの小惑星番号をH・Hのように2度繰り返したのものが1919である。ナボコフ亡命の年。1616年シェイクスピアセルバンテスが死に、1818年にジョン・キーツが『エンディミオン』を発表した。ナボコフ訳『オネーギン』でも言及のあるフォントネル『世界の複数性についての対話』(1686)がラランドによって出版されたのも1818年。2020年は1935年生まれのローが85歳になる年だが、小惑星85番はIoである。小惑星の中でもっとも短い名前を持つのがIoLi(リー)。1日違いで発見された小惑星954番Liと955番Alstedeは双子のようなもので、発見者Karl Reinmuthの妻Lina Alstedeの名前にちなむ。Liをアナベル・リーと重ねるならAlstedeはドロレスだろう。AlstedeはLiから始まった。この小惑星が発見された8月5日は『ロリータ』の序文が書かれた日付と合致する。「1952年9月から10月にかけての日刊紙」を調べてみれば、小惑星1988番Deloresの発見が報じられているかもしれない。dolores、boleros、polares、qclares。凹面。J.R. Jr.のようにLiをLILIにして180°回転させると1717になる。Widowed Male、Widworth, Mass、Wolf, Max。WMWM → VVMVVM → 2020。Max Max。ハンバートによるドロレスの愛称(Dolly、Dolita、Dorothy、Lolita、Lola、Lo、L.)の頭文字をローマ数字として読んで合わせた1700は、Zvezdara(星の家)の小惑星番号と同じである。1947−1447=500。ドロレスの不在。Monique、Dolores、Charlotte、Leigh、Хумберт(Humbert)、Valeria、I。第1部1章の大文字(capitals)もローマ数字として換算すると3103(MDDDLLLLLLLLLLLLIII)になる。『ロリータ』の執筆途中に書かれた「ヴェイン姉妹」では最終パラグラフの語頭にアクロスティックが仕込まれていたが、『ロリータ』では最初の章の文頭が怪しい。何しろロリータは1月1日生まれであり、19世紀の初めの日である1801年1月1日に発見された小惑星1番Ceres(サッポーの亡命先であり、Skyllaの住むシチリア島で観測)と結びつけられているのだから。第1部1章で証拠品第1号を披露しようとさえしている。records of the number one。1に注目するしかない。文の1文字目をローマ数字として足していくと1802(MDLLLLLLII)になる。最後のIをロリータのように独立させ、我らがシャーロットのように1を加えると1801.1.1.になる。3つの“I”。章内の大文字から文頭の大文字を引いてローマ数字として数えると、つまり3103から1802を引くと1301になる。またもや数字の魔術師シャーロットのように1を足してみよう。するとナボコフの愛妻ヴェラが現れる。なお、小惑星1258番Siciliaも1302番Werra(ドイツのヴェラ川に由来)も発見者はKarl Reinmuthである。彼は小惑星1000番にCeresの発見者Piazziの名を、そして1111番には自身の名をつけた。Doloresへの愛を綴った回想記から(ハンバートより先に亡くなった主要人物である)Annabel Leigh、Valeria、Charlotte、Clare Quiltyを除くと245(小惑星Veraの番号)になる。

ヴェラに捧げられた『ロリータ』は序文・全33章の第1部・全36章の第2部を合わせた70章構成だが、LoのLにも逆立ちさせると(凹面!)70になる。「言葉の魔術師」ならIoとloと混同させるトリックも思いつくだろう。花咲く乙女のメタモルフォーズ。

『ロリータ』では日付がハッキリ記されていることは珍しい。その出来事がいつ起きたのかを知るには読者が自分で数える必要がある。第1部26章(195頁)では例外的に1947年8月15日(あたり)と明記される。小惑星26番ProserpinaはCeresとJupiterの娘に由来する。全70章のうちで最も短く、日付があり、「ロリータ」が9回も連呼されるこの異様な章にも何か仕掛けがありそうだ。

 

This daily headache in the opaque air of this tombal jail is disturbing, but I must persevere. Have written more than a hundred pages and not got anywhere yet. My calendar is getting confused. That must have been around August 15, 1947. Don’t think I can go on. Heart, head—everything. Lolita, Lolita, Lolita, Lolita, Lolita, Lolita, Lolita, Lolita, Lolita. Repeat till the page is full, printer.

 

コンマやピリオドを一つの区切りとしてローマ数字を読みとっていくと、一文目は1002(DIID)と1001(IM)、第二文は1000(M)というように1ずつ減っていくのがわかる。8月15日に発見された小惑星1002番Olbersiaから1000番Piazziaへと遡っていくのだ。最後の文では、Piazziが発見したCeresの小惑星番号と同じ1(I)から始源を更に遡るサイファー(暗号、ゼロ)へと向かう。しかし、1000から1へと至るその過程では、第三文にある通り、「だんだん混乱する」(1000、1201、1000、601、50、50、50…)。語頭のローマ数字を読みとっても意味がなくなる。そこで読み方を変えて語頭(head)だけではなく語中(heart)のローマ数字もすべて(everything)見ていくとどうなるだろう。

 

Lolita, Lolita, Lolita, Lolita, Lolita, Lolita, Lolita, Lolita, Lolita. Repeat till the page is full, printer.

 

101、101、101、101、101、101、101、101、101。202、1。101×9+202+1=1112。101番Helenaと1112番Poloniaも8月15日に発見された小惑星である。『ロリータ』における日付と小惑星の発見日に密接な結びつきがあること、ならびにローマ数字の鍵としての有効性が改めて確認された。さて、ハンバートの望み通りに「LOLITA」を連呼していくとどうなるだろう。1010(Marlene)、1111(Reinmuthia)、1212、1313、1414(Jérôme)、1515、1616、1717、1818(Brahms。8月15日に発見)、1919、2020…。このあたりでやめておこう。アナベル・リーの苗字のスペルがLeeからLeighに変えられたのは、名前に潜むローマ数字をLolitaと同じ「101」にするためかもしれない(Annabel Leigh)。作中でも言及があるエマ・ボヴァリーは、蓮實重彦が指摘した通り、フロベールボヴァリー夫人』においてもその草稿や書簡においても一度もフルネームで記されることはなかったが、アナベル・リーもそうである。『ロリータ』では「アナベル」が17回、「リー」は(ポーの詩やロリータと重ねる形で)3回登場する(Miss Lee、Dolores Lee、Loleeta)。101×(17+3)=2020。『ボヴァリー夫人』における家族間の相互模倣や頻出する「3」は『ロリータ』においても現れる。ナボコフは蓮實に先んじていたのだろうか。

1947年8月15日(あたり)の1919日後にハンバートは死ぬことになる。彼がドロレスに出会った1947年6月からスキラー夫人に再会する1952年9月までの日数も1919日(あたり)であり、ロリータが亡くなる1952年12月25日は出会いから2020日後(あたり)である。

 

 

「中枢神経」であるカスビームの床屋にもローマ数字が仕込まれている可能性がある。何しろ床屋は頭に技巧を凝らす場所なのだ。一文だけなので文頭ではなく語頭に注目しよう。 今更ながらの引用。

 

In Kasbeam a very old barber gave me a very mediocre haircut: he babbled of a baseball-playing son of his, and, at every explodent, spat into my neck, and every now and then wiped his glasses on my sheet-wrap, or interrupted his tremulous scissor work to produce faded newspaper clippings, and so inattentive was I that it came as a shock to realize as he pointed to an easeled photograph among the ancient gray lotions, that the mustached young ball player had been dead for the last thirty years.

 

IVMVMIMMICIIICLM…。アラビア数字に直すと5266だ。1935年1月1日に生まれたロリータが1949年7月4日の独立記念日に失踪するまでの日数は5299日。これに例の1を加えたものがハンバートの詩にある5300日である(452頁)。シャーロットの裏稼業は非常に重要だ。ロリータの誕生から5266日目は1949年6月1日。ハンバートが床屋に来たのは同6月上旬だが、何日かまでは明らかにされていない。この月の出来事の中で最初に日付を特定できるのは、「運命のエルフィンストーン」に到着した夜にロリータが発病する27日。入院によって2年ぶりにハンバートから離れることになってからスキラー夫人として亡くなるまでの日数は、小惑星Doloresの番号と同じ1277である。このままローマ数字を足していくことで日付がわかるかもしれない。カスビームの床屋に訪れた日を特定できれば、きっと何か使い途があるだろう。そう期待して読み進める読者の前に無情にも「死(dead)」が訪れる。D=500なので一気に5766まで増えてしまった。すべてが水の泡だ。ここで読者は床屋の主人とともに息子の死を嘆くことになるだろう。彼が30年前に亡くなってさえいなければ(dead for the last thirty years.)、ローマ数字が5816という意味不明な数値になることはなかった。あのシャーロットですらもうどうすることもできない。私は本当にショックを受けた。瞬時に読み飛ばされるような一文を文字単位で注意深く重層的に読むことで、そこに描かれた悲嘆を読者が追体験することになる。ナボコフはそこまで計算していたのだろうか。恐ろしい。ちなみに二重の死を告げるDLをアラビア数字に変換すると、ハンバートの命日11月16日に発見されたSentaの小惑星番号と同じ550になる。また、ロリータが亡くなった日から5816日遡って魔法の1を足すと1937年1月23日になり、小惑星1426番Rivieraの発見年と582番Olympiaの発見日が現れる。眩いばかりの偶然の一致!刑務所の閲覧室(55頁)にあるディケンズのセット本だけ出版年がローマ数字になっているのは、IVXLCDMをローマ数字として読んで計算することを他の箇所でも読者に行って欲しいからだろう。IからMまでをすべて含んだMDCCCLXXXVIIを1887に直す過程で、読者にリマインドさせようとしている。このような鍵は『ロリータ』のいたるところにある。

 

ナボコフは「カスビームの床屋」を書くのに1ヶ月もかかったようだ。それはこの短い一文に『ロリータ』の重要モチーフや言葉遊びを旅行カバンのようにギッチリ詰め込むのに苦労したからかもしれない。私も苦労した。

 

 

Wolfは英語でもドイツ語でもオオカミ。フランス語ではloup。どちらも主にハイイロオオカミのこと。Ralph WilliamsのRalphもオオカミから来ている。Woolesyだってそうだ。羊毛をかぶったオオカミ。ロシア語ではvolk。Vladimir Nabokovでアナグラムを作るとオオカミが現れる。Divino abram volk。Volkoffはバレエ版『シンデレラ』の台本を書いた。その音楽を担当したロシアの作曲家プロコフィエフはスキタイ組曲「アラとロリー」(Suite scythe "Ala et Lolli")で知られる。鎌(scythe)は最初の小惑星Ceresを示す記号で、アラとロリーはアナ(ベル)とロリータを連想させる。1月1日がCeresとドロレスを結びつけたように、4月23日はシェイクスピアプロコフィエフをつなげる。同じ日の生まれ。パスポートに記載されたナボコフの誕生日もそうであり、天才子役シャーリー・テンプルもこの日に生まれた。『ロリータ』を絶賛し一躍有名にしたグレアム・グリーンは、かつて10歳に満たないシャーリーをマレーネ・ディートリヒと並べ、その性的魅力について語っていた。

ドロレスの生誕年にシャーリーが出た映画のタイトルに近い語句や役名は『ロリータ』にも登場する。たとえば『The Little Colonel』(1935)のElizabeth、Gray、Hull、Jack、Scott、Walker、そしてBecky 'Mom Beck' Porter。シャーロット(旧姓Becker)殺害計画を練る際には「(ブルドッグのような)小さな大佐」(little colonel)が現れる。Lloydeもドロレスの同級生Floyd(ウェールズ語で灰色を意味するllwydに由来)と重ねられる。『ロリータ』で頻出する数字50はVirginiaの小惑星番号だが、幻のニンフェットやポーの幼妻だけでなく、『Littlest Rebel』(1935)でシャーリーが演じた役の名前もまたヴァージニアである。ナボコフはVirginia Woolfの小説をすべて読破したようだ。「ヴァージニアの灯台」や「ヴァージン・ウール」はおそらく彼女へのアリュージョンだろう。ヴァージンなのはウールのセーターだけだとからかわれるドロレスは、無垢の象徴的存在であるシャーリーと正反対のようにも思える。しかしシャーリーが1947年の映画で女学生(Bobby-Soxer)やバーバラ(230頁)を演じていたり、『Dimples』(1936)の役名がSylvia Dolores Applebyであったことを考えると、ドロレスと重なる部分もあるだろう。シャーロットがマレーネ・ディートリヒとどこか似ているように。アップルグリーンの光に包まれるドロレスとリンゴの結びつきについては言うまでもない。ボビー・ソックスを履いて太古の果実をかじるローラ(106頁)。『ロリータ』には「斑」(dot、spot、dappleなど)のモチーフもあり、アナベル発疹チフスやドロレスのそばかすなどにも現れる。斑はフランス語でpommeleであり、リンゴ(pomme)を含む。頬骨(pommet)のかわいいドロレスは自転車に乗り、サドルシューズを履く。馬の鞍も英語でsaddleだが、鞍にはpommelと呼ばれる部位がある。斑と鞍と言えば、芦毛ラテン語Glaucus)の馬を想起するだろう。白馬の王子様がシンデレラの残した靴に目を留めるように、ハンバートはまずドロレスの食べたリンゴ、そして片方の靴下に注意を向ける。それからその持ち主と出会うのだ。ちなみに日本のロリータ服ブランドSherly Templeにもシンデレラモチーフの服がある。

シェイクスピアと誕生日が同じだという理由からではないだろうが、プロコフィエフバレエ音楽『ロメオとジュリエット』も作曲している。バレエ音楽では『道化師(Chout)』が最初の上演作だ。彼もニコラス・ナボコフの友人である。「Romeo」の名が出る章でハンバートは『ロシアン・バレエ』や『Clowns and Columbines』をドロレスにプレゼントする。ClownはChoutと同様道化師を意味する。ナボコフ 『プニン』によると、シンデレラの靴は本来鳩(columbus)色で、植物Columbineのような色をしているようだ。新大陸の発見によって中南米原産の植物がヨーロッパへ渡る以前のシンデレラには、当然ながらカボチャの馬車は登場しない。シンデレラの靴と馬車にはコロンブスの影が差している。ヴェスプッチの蜂とコロンブスの鳩はナボコフアメリカで飛び交う。ナボコフアメリカに帰化してから書いた『ベンドシニスター』から『アーダ』に至るまでシンデレラのアリュージョンを欠かさなかったのは、新大陸の発見者を意識してたからなのだろうか。ちなみにプレイアデス(Pleiádes)の語源にも鳩(péleia)がいる。グラウコスも「海原の若き鳩」と呼ばれる。Columbineの学名に由来するのが小惑星Aquilegia。この星を発見したのもMax Wolfの弟子Karl Reinmuthである。Reinmuthという名前は英語でCounsel senseという意味。DolphはCounsel wolfという意味なので、KarlとMaxの苗字を合わせた名前ということになる。あっ、Capitalの著者も1818年生まれだ。Reinはドイツ語でpure、muthはmothを連想させる。ユッカを形容する「so pure, so waxy」もワンチャンKarlと(作中でtaxiと重ねられる)Maxが念頭にあるかも。ユッカ蛾の「lousy」さの陰にオオカミ(loup)が隠れている。

 古代ギリシアでは現在のおおかみ座にあたる星々を「野獣(Therion)」と呼んでいた。聖書でリリス(Lilit)が登場する唯一の箇所にも「野獣」(wolvesと訳した英訳聖書も複数ある)が登場する。ハンバートによるロリータへの情欲は「野獣(beast)」と関連づけられている。彼の通ったリセ(lycée)は古代ギリシアのリュケイオン(Lykeion)から来ているが、さらに遡ると狼のアポロン(Apollon Lykeios)に行き着く。おおかみ座になったとも言われる半人半狼のリュカオンはおおぐま座になったカリストーやこぐま座になったアルカスと家族関係にある。ナボコフが発見した新種の蝶Lycaeides sublivens Nabokovの属名はこのリュカオン(ラテン語ではLycaon)に由来する。

 

『ロリータ』は愛妻ヴェラに捧げられた。ナボコフが初めてヴェラを目にしたのは1923年5月8日の慈善舞踏会である。彼女は黒いオオカミが描かれたマスクを決して外さなかった。ナボコフ夫妻はこの出会いの日を50年に渡って祝い続けた。

ハンバートがアナベルと出会ったのは1923年であり、ロリータの初登場時の身長は約58インチである。The Piazza! 小惑星1000番Piazziaは1923年に発見された。「58インチ」はH.H.とその小さな花嫁(bride=nymphe)を招いたゴア夫妻の住所(58 Inchkeith Ave.)にも現れる(466頁)。「Reginald G. Gore」でアナグラムを作るとginger aleとgrenadineができるが(ロシア訛りのせいでnが余計に入る)、これらを混ぜたカクテルはShirley Templeと呼ばれる。そのひとつ前の文には、ナボコフとヴェラが結婚した年が記されている。『ロリータ』が世に出る30年前の1925年。彼らの結婚記念日である4月15日はBliss Carmanの誕生日でもある。小惑星415番Palatiaの名前は宮殿(palace、palatial)や口蓋(palate)、アパラチアのモチーフと結びつく。夫婦の始まりと人生の始まり。人類の始まりにはリンゴが欠かせない。小惑星150番Nuwaもまた人類を創造した女媧に由来する。言葉にも起源はあり、ヴェラの旧姓スローニムの語源候補には象、谷、幕(カーテン、スクリーン)が挙げられる。これらのモチーフは作中繰り返し現れる。2つの小惑星ヴェラだけでなく、スローモーションのニンフェットも愛妻への言及かもしれない。小惑星Doloresはスペインの政治家ドロレス・イバルリにちなむが、彼女の愛称であるLa Pasionaria(パッション・フラワー、時計草)は中南米原産の花を指す。リンネ(L.)の『植物の種』(1753)に記載されたトケイソウにはヴァージニア産とヴェラ・クルス産がある。

小惑星58番Concordiaはローマ神話コンコルディアに由来する。この調和の女神に対応するのがギリシア神話ハルモニアー(アフロディーテの娘)である。Harmoniaの小惑星番号である40、あるいは「ハーモニー」は『ロリータ』内でたびたび登場する。ドロレスの知能指数121は小惑星121番Hermione(アナグラムがHarmonieを連想させる)と掛かっているのだろう。宇宙を感じさせる宮殿「Hotel Mirana」の文字順を入れ替えると「alto(=viola) in harem」や「alt harmonie」、そして「Harmonia」ができる。蛇となった夫カドモスに巻きつかれ自らも蛇となるハルモニアーの姿は、伏羲と蛇身を絡め合う創造神女媧に重なる。ナボコフはそこに妻の姿をも重ねたのかもしれない。彼の最大の理解者であり、支援者であり、ミューズであり続けたヴェラ。ハンバートが「私の物語」を締める最後の言葉に選んだのは「concord」であった(550頁)。

ヴェラによれば、ナボコフは自作に妻を出さない良識を持っていたそうだが、『ロリータ』に秘められた自分への愛に彼女は気づけたのだろうか。この複雑極まりない小説の暗号を解く鍵は、2人が共有する最初の記憶に不可欠なmaskwolfに他ならない。

 

シジミチョウは漢字で書くと小灰蝶であり、学名はオオカミに関連する。Cinder-ellaとWolfを両翼とするこの蝶は「中枢神経」のラストを飾るにふさわしい。その舞は灰(ache)から始源(arche)へと弧を描く。シンデレラを中心としたお伽話のアリュージョンを『ロリータ』で織り交ぜたナボコフによると、「偉大な小説というものはすべて偉大なお伽話」であり、「文学は、狼がきた、狼がきた(wolf, wolf)と叫びながら、少年が走ってきたが、そのうしろには狼なんかいなかったという、その日に生まれた」(「良き読者と良き作家」)。文学の産声ともいえるこの4文字が一度も作中に登場しないのを知って激しいショックを受けながらも、私は「Wolf!Wolf!」と繰り返しながら灰色のの痕跡を追ってきた。自らの虚構を信じだしてハンターの役まで買ってでたのだから、狼少年というよりはドン・キホーテに近いのかもしれない。「小説の起源」と称される作品の主人公は、さまざまな源流をたど(らせ)る『ロリータ』において、シャルルマーニュコロンブス(そしてヴェスプッチ)、ギリシアローマ神話の神々らと同伴するにふさわしいだろう。ドゥルシネーアの輝く星空の下、時計(Uhr)のはXII(zwölf)を差そうとしている。終わりの刻みが始まりとなり、円環的永遠を得る。O!エルフが消える。オオカミとクマがむ言葉の球場(Word golf course)を巡る旅はこれでおしまい。

ナボコフは今、地に舞い降りた。

 

【参考文献】

市川春子『図説 宝石の国講談社、2020年