SyZyGy -しぢじ-

ここ掘れニャンニャン

宝石の国のロリータ/Lolita to Land of the Lustrous

真実と幻覚とは紙一重 俺もそこへ行く ペンと紙をくれ

 

 

 

私の知る限り、小惑星という補助線を引いてナボコフ 『ロリータ』を読み解いたのはマンガ家市川春子が人類初だ。2020年7月に発売された『宝石の国』11巻の特装版特典「図説 僻宇宙 Y-3579203181277圏 1 生命体と文化」(のちに『図説 宝石の国』として刊行)は公式設定資料集としての側面を持つ一方で、ナボコフへのオマージュが隠された言語パズルとなっている。パズルであることすら隠されたパズル。裏門から入る必要がある。「3579203181277」が小惑星番号の組み合わせから成っていることに気づき、「57」がムネモシュネ、「1277」がドロレスの小惑星番号であることを知った私はまずナボコフ『記憶よ、語れ 自伝再訪』を手にとった。この伝記にはムネモシュネという蝶が登場するからだ。『宝石の国』のキャラ名は学名由来のものが多いので「ムネモシュネ 学名」でググってみたらそんな記事がトップに出てきた。読むしかない。『ロリータ』は30ページくらい読んでいた。ロリータが登場する前に挫折したが、彼女の本名がドロレスだという知識はあった。どこで知ったのかはわからない。文庫裏表紙の内容紹介にも訳者あとがきにも巻末解説にも「ドロレス」は出てこない。Doloresの愛称がLolitaってムリない?って思った記憶だけがある。フィクションを活字で読むのは苦手だけど伝記ならいけるはず。そう思っていた。ナボコフの騙られた記憶をなんとか読み終え、ナボコフ関連の情報を多少ググった後でパズルの解答(下記参照)をツイートした。基本的な読み筋は正しいという確信はあったものの『宝石の国』の読者からはほとんど反応がなくて悲嘆に暮れてる中、著名なナボコフ研究者からRTされた。人文科学系の研究者はラッパー並みにエゴサをする。それは知っていたが、まったく想定外の事態に驚いた。誤配っていうの?なぜか相互フォローになったので、さすがにナボコフの代表作くらいは読んでおかないとまずい。モラルに反する。ちょうどその頃ロリータ・ファッション愛好者のバイブル映画『下妻物語』がアマプラに追加されたので観てみたところだった。深キョンかわいい。言葉遊びや多言語、そしてロリータ服が好きなのに『ロリータ』を読まずにいるのは社会人としての自覚に欠けるのではないか。重なった偶然に背中を蹴られて『ロリータ』読みを再開することになった。

 

イタロ・カルヴィーノによると、古典とは「自分がそれまでに抱いていたイメージとあまりにかけ離れているので、びっくりする」し「だれにも読まれたことのない作品に思える本」らしい(『なぜ古典を読むのか』←須賀敦子の翻訳メッチャいい)。私にとっての『ロリータ』がまさにそうだった。世界的なベストセラーであり文学愛好者に細部を愛撫される作家の代表作であっても、私の目には誰の指紋もついてないように見える箇所が多々あったのだ。論文とか一応チェックしました。何で誰も指摘してないんだ?それとは別種の驚きもあった。私は以前、『宝石の国』にはシャルル・ペローの童話(市川春子が崇拝する澁澤龍彦が訳している)、そしてそれらを原作とするロシアン・バレエ作品「シンデレラ」や「眠れる森の美女」のサンプリングがあること、2020年ネタが仕込まれていることを指摘したり、『宝石の国』の遠い先祖としてレミ・ベローの宝石変身譚『宝石の愛と新たな変身』(これも澁澤が紹介してる)を挙げたりしていた。ロリータ(・コンプレックス)も澁澤案件。あと、博物学の発展と切り離せない大航海時代ね。これらの要素がすべて『ロリータ』内にも見出せたときにはさすがにヒザを打った。『ロリータ』はまぎれもなく『宝石の国』の重要な元ネタだったのです!(`ェ´)ピャー。だからこそ設定資料集にナボコフへのオマージュがナボコフ的に組み込まれているわけだ。画期的なナボコフの解読法を発見したのにそれを公にはせず、そのまま自作のパズルを解く鍵(のひとつ)として採用する。ナボコフを下敷きにした作品は多いが(興味がある人は秋草俊一郎『アメリカのナボコフ 』所収の「日本文学のなかのナボコフ」などをチェックしてみてね)、こんなやり方は誰もしてない。たぶん。斬新な大ネタ使い。そういやラッパーのサトウユウヤって本名じゃなくて佐藤裕也から来てるらしい。何の変哲もない名前にも裏がある。そのパズルを解く過程で小惑星番号の存在を知り、その内のいくつかを記憶していた私は、『ロリータ』を読み終えたその日にドイツの天文学者Max Wolfとその弟子Karl Reinmuthの重要性に気づいた。『図説 宝石の国』の解法はそのまま『ロリータ』解読に応用できる。その成果は前記事にある通りである。

 

市川春子は間違いなく『ロリータ』における小惑星のテーマを見抜き、ヴォルフ(Wolf)を中心とした天文学者たちに注目していた。『図説 宝石の国』の「リュクアオン」はLycaon(英語でwolf)のこと。犬と狼の間に位置するアフリカの野犬リカオンも指す。アフリカ・ラテンアメリカ・蝶・犬・神話・天体の結節点。『ロリータ』のカーナンバー同様、「7361K897年」は5つの小惑星番号が重ねられたものだが(7361、897、736、1008、97)、内2つはヴォルフの発見した小惑星である。真ん中のKは「000」ではなく「千」に置き換える。7361・897を736・1千8・97にすることで、これらも他の数字と同じくナボコフ(作品)や中南米に関係するものだとわかる。Endresだけ浮いてるけど、カタカナにするとエンドレスなんで。ロリータへの愛はフォーエヴァーなんで。よろしく。小惑星1000番Piazziaも入れるなら6つ。ハンバートがロリータと出会った瞬間「Piazza」という声が響く。この小冊子は横書きであるにも関わらずアラビア数字と漢数字を併用しているが、これは数字に仕掛けがあることのほのめかしだけでなく、この暗号を解くヒントにもなっている。『ロリータ』においてもローマ数字が暗号を解く鍵となる。ヴォルフが発見した小惑星をABC順に並べると、Lの項の最初が小惑星1008番La Paz(フォスフォフィライトの名産地として有名なボリビアの首都)で最後が小惑星897番Lysistrataになる。2つのLを重ねるのには理由がある。『ロリータ』は文字通りLolitaから始まりLolitaで終わる(Lolita to Lolita時計のような円環になっている。Lolitaは作中でL.と略されるのだから、Lolita to LolitaをL. to L.と言い換えられるだろう。ナボコフの短篇「重ねた唇」の英題はLips to Lipsで原題はУста к устам(Usta k ustam)である。重ねたL(ips)、L to L、真ん中にK。「7361K897」はナボコフとヴォルフのコラージュなのだ。文学と天文学の異属交配。ヴォルフの見つけたLからはじまる小惑星の最初と最後を重ねることで『ロリータ』の円環を再演し、その2つのLの間(La Paz to Lysistrata)に注意を向けることで読者にロリータを発見させようとしている。コロンブスがスペインからインドへと向かう途中で新大陸にたどり着いたように。あるいはヘリウムとアルゴンの間に「ネオン」を見つけたように。「ネオン」は小惑星336番Lacadiera(リヴィエラにある村の名前に由来。Lolitaは「リヴィエラの恋人」Leighと重ねられる)の存在に気づかせるヒントでもある。市川春子の仕込んだ暗号の規則性さえ理解していれば、天文学者オーギュスト・シャルロワの発見した小惑星331番と337番の間に何かが隠れていると察せられるだろう。ヴォルフの発見した小惑星リストのLの項を頭から順に、La PazからLysistrataへと目をすべらせていくことで読者は小惑星Lola(ドロレスの愛称のひとつ)を発見することになる。ロリータを目にして衝撃を受けたハンバート。スターになるロリータ。その再現。擬態的ヒントと暗号化の両立。ナボコフの愛読者なら誰しも真ん中にぽつねんとあるKを見た瞬間「重ねた唇」を想起するだろう。知らんけど。

 

ちなみに『宝石の国』でロリータ服をよく着ているカンゴームは、灰色の粉に覆われた星(=グレイ・スター)で唇を重ねる。『宝石の国』は言うまでもなく博物学を主要モチーフとしているが、最近中国のロリータ・ブランドから『本草綱目』に描かれた植物とその説明文を柄にした服が出たので興味深い。「フォスフォフィライト」は「ゴスロリ最高」と韻を踏む。ロリータ・ファッションにはくまさんモチーフもかなり多いので、私が前回書いたロリータ=こぐま説は既に業界の常識であった可能性も捨てきれない。シャーリー・テンプルすらロリータ・ブランド名にされている。あなどってはいけない。ノーマークのポジションで最強は羽根をのばす。仮題が「The Kingdom by the Sea」(ポーの詩「アナベル・リー」に由来)だった『ロリータ』においてもロリータがリンネのようにL.と略されるし、ハンバート(Humbert)はフンボルト(略称がHumb.)を含む。ロリータとハンバートが一緒に観た西部劇はロアリング峡谷が舞台だが、これはカリフォルニア州ハンボルト(Humboldt)郡にある。郡庁所在地はユーレカ(Eureka)。Ceresをはじめとする小惑星への言及があるポーの宇宙論ユリイカ(Eureka) 』はアレクサンダー・フォン・フンボルト(Humboldt)に捧げられている。ユリイカ=発見もまた『ロリータ』の重要な主題だ。道化(bouffon, buffoon)の主題はビュフォン(Buffon)につながるだろう。ロリータへの思いを込めたハンバートの詩にはユゴー「王は愉しむ」の引用がある。道化が主人公のこの戯曲を原作とするオペラの仏訳が『Rigoletto, ou Le Bouffon du prince』。3人の大博物学者の名前が隠れている『ロリータ』には植物や動物の他に鉱物もたくさん登場する。三界→ Three Kingdoms →三国時代→月・海・丘。1943年にアリゾナでMichael Fleischer(→Fleischmann→Flashman)らによって発見されたラムスデル鉱(Ramsdellite)はアメリカの鉱物学者Ramsdellに因む。ロリータの住む家はRamsdaleのLawn街にある。Lawnはリネン(リンネのアナグラム)やコットン製の薄い生地のことで、シャルルマーニュの母Berthe(女装したハンバートの名前)の出身地Laonに由来する。ヨーロッパの父方のおばあちゃん。また、分類階級のKingdom(界)、Phylum(門)、Class(綱)、Order(目)、Family(科)、Genus(属)、Species(種)も作中に散りばめられている。ただしPhylumは複数形のphylaになってるので単なる偶然かもしれない。言葉遊び好きがこういう言及をしているときはその人自身も何か仕掛けている場合が多い。ナボコフが短篇「ヴェイン姉妹」でアクロスティックについて触れた際に自分もこっそりやってみせたように。『ロリータ』にもその手のヒントがけっこうある。「え!?いきなり何言い出したのこの人???」ってなったら要注意だ。

 

ついでに大航海時代もいっとこか。『ロリータ』に記された地名はコロンビアに始まりアラスカで終わる。コロンビアはもちろんコロンブスに由来し、Columbusはcolumba(鳩)から。『プニン』でナボコフはシンデレラの靴をcolumbaに結びつけている。コロンブス(そしてペロー)以前のシンデレラにはカボチャ(中南米原産)の馬車は出てこなかった。ジャガイモやタバコといった中南米の植物は博物学や人々の生活だけでなく物語も一変させた。灰かぶりを意味するシンデレラと重ねるように、タバコの灰でいっぱいのヘイズ家でハンバートはロリータと出会う。いろんな要素が詰め込まれたこの重要な1部10章にはバハマという地名も出てくる。コロンブスが到達した最初の島サン・サルバドル島がある国だ。ハンバートは第1部8章の終わりにヴェネツィアやコロンビアの名前を出した後、9章冒頭でポルトガルからアメリカに渡ったと語る。ジェノヴァ出身でスペインからアメリカに向かったコロンブスを連想させる。さまざまな場所をめぐり(cruise)多くの地名を挙げていく彼が最後に言及するのはスキラー夫妻が向かったアラスカである。アジアとアラスカが地続きでないことを1648年に発見したロシアの探検家デジニョフが上陸していたかもしれない、アメリカ大陸北西部最果ての地アラスカ。大航海時代(Age of Discovery)の終わりをいつにするかは諸説あるし、ロシア出身のナボコフがどう認識していたかは不明だが、増田義郎のようにデジニョフの発見を以って終わりとする学者もいる。クリストファー・コロンブスからセミョン(Семён)・デジニョフへ。Coast 2 Сoast。

 

中米パナマにはコロンブスの子孫が代々治めていたベラグア公爵領がある。湿度がとても高い地域だ。Veraguaはスペイン語のver(見る)とagua(水)に分けられる。コロンブスがこの地に到着するときに暴風雨(agua)を目の当たりにしたこと(ver)、そして船員たちの服が湿気でカビまくってたこと(averagua)からその地名がつけられたという俗説がある。「アベラグア」は現在コスタリカからエクアドルにかけて、特にコロンビアで使われる地域語である。コロンビアを代表する作家ガブリエル・ガルシア=マルケスの全著作の中でもたった2回しか登場せず、日本の翻訳者が2人も訳し漏らす程度にマイナーな言葉だ(邦訳「土曜日の次の日」参照)。にも関わらず『宝石の国』には「あべらぐあ」が出てくる。作者が中南米博物学関係の資料を漁ってるうちに植物学者バートホルト・カール・ジーマンの航海記を知り、そこで目にしたのだろう。コロンブス大航海時代博物学中南米、植物、言葉遊び。読者が「averagua」をググることで『宝石の国』が何を下敷きにしているのかが一発でわかる。そういうヒントになっている。誰がわかんねんってヒント。実際、月人たちの名前は大航海時代に植民地化された地域の虫や植物に由来するものが多い。私のつぶやき参照。「セミ」のスペイン語はcigarraでcigarro(葉巻・紙巻きタバコ)とよく似ている(実際、セミは煙となり宙を漂う)。古いスペイン語ではオスの蝉をcigarroと呼ぶ場合もある。セミと対になってるアペはイタリア語だとミツバチの意味。アメリカの語源になったアメリゴ・ヴェスプッチの苗字もスズメバチ(vespa)から来ている。『ロリータ』内でも重要な場面で蝉が鳴き、蜂が飛ぶ。全然関係ないけど「打ち水」も出てくる。アメリカでもやってんじゃん。さらに関係ないけど、ヨーロッパの映画にも蝉の鳴き声が聞こえるものがあるので、興味がある人はユスターシュ監督作品の『ぼくの小さな恋人たち』をご覧あれ。南仏が舞台。リヴィエラあたりでもうるさく鳴いてそう。こういう本筋から外れた小ネタは読む人の関心によってなまら役立つ情報に化ける。種が種を生み、予想しない誰かのもとで花を咲かせる。それはさておき、煙と灰を出すタバコも重要アイテムだ。ジャガイモに関しては、掲載誌月刊アフタヌーンの欄外コメントに「インカのめざめ」が出てくる。ついでに言うと、「流氷」は2話の時点で欄外に名前が出されている。怪しいね。

 

『図説 宝石の国』ではインカなど中南米先住民族の言葉だけでなく、他地域の少数言語も現れる。「タオンテル」も「あべらぐあ」同様、言葉の意味自体が重要なんじゃなくて、載っているテクストやその背景が重要なのです。ググるとすぐ出典がわかる親切設計。まぁ、意味はわかっても意図はそうそうわからんのやけど。「あべらぐあ」に関しては『ロリータ』の「斑」のモチーフにつなげられなくもないが。読者はひたすらdigるしかない。話者が1000人しかいないパプア・ニューギニアの言語Seimatに訳された聖書に「taon tel」が出てくる。「taon」は英語「town」の借用語、「tel」は英語の「a」くらいの意味で、「ある町に、神を恐れず、人を人とも思わぬ裁判官がいた」(ルカによる福音書18:2)の一部。「エンマ」を想起させる(ちなみに『ロリータ』においてもエンマ・ボヴァリーへの言及がある。また、シャルロワは小惑星Emmaの発見者でもある)。「イフ・パラウム(Ihu Paraumu)」はマオリ語で鼻・腐植土(humus)の意味。イエズス会の宣教師が使用していた古いスペイン語からの借用語としてのIhuはJesusを指す。イエス・キリスト(Ihesu Xpisto)を略したIhu XpoのIhuである。イフによるエキスポとしての『図説 宝石の国』。創世記では人間(Adam, human)は土(Adamah, humus)から創られる。アダムは赤い(アードーム)土から来ているという説もある。ダイヤモンドは古代ギリシア語でadamasなので、赤い土からできた最初の人間アダムと最初の宝石レッドダイヤモンドを重ねることも可能だろう。黄色・無色・黒のダイヤモンドは人種、緑は新たな人間となったフォスに対応する。ルイス・ギンズバーグユダヤの伝説』によると、神は4色の塵からアダムを作り、赤は血、黒は内臓、白は骨と血管、緑は肌になったらしい。「人間の誕生」と「赤」つながりで言うと、女性器は古代中国で辰砂の洞窟(丹穴)と呼ばれていた。澁澤龍彦はタオイズムを鉱物愛と滅亡愛、そしてSF的幻想と結びつけている(「鉱物愛と滅亡愛」)。道教における辰砂の重要性は言うまでもない。辰砂は硫化水銀から成る。スペインに植民地化された中南米の銀山では、水銀を駆使したアマルガム法によって従来の灰吹法(酸化鉛 Lithargeを作る)より多くの銀を産出することに成功した。シンシャはこの水銀を体液とする。経血のように制御しきれない体液でまわりを汚(穢)すことを恐れるシンシャは洞窟にこもる。女陰のような洞窟の入り口から見える月はどんどん上がっていく。月(経)が消えると今度はフォス(=新たな人間)が逆向きで顔を見せるのだ。福音書は英語でEvangelion、創世記はGenesisである。これに「ネオン」を加えるとNeon Genesis Evangelionとなり、2020年ネタになる。『宝石の国』11巻発売の時点では、新劇場版エヴァの完結作は2020年公開予定だった。『ロリータ』もエヴァ同様聖書ネタに満ちていて、「リリス」が重要なモチーフである。2020年に開催予定だった東京五輪ネタも『図説 宝石の国』にある。本編にも。「2020年」は『ロリータ』にも登場する意味深な数字だ(気になる人は前記事参照)。にもにも。河出ペーパーバックス版『ロリータ』(1962)の装丁を担当した原弘は東京五輪(1964)のポスターの文字デザインも手がけている。『インディヴィジュアル・プロジェクション』で阿部和重がやったように、市川春子もまた2つの東京五輪を重ねているのではと思っていた私は、秋草俊一郎「日本人はナボコフをどう読んできたか―『ロリータ 』を中心に―」を読んでロリータと旧東京五輪の結び目を知り衝撃を受けた。2つの東京五輪を別のしかたでゆるやかにつなぎ直す『ロリータ』。最初はオリンピア・プレスから刊行されたことも考えると、『ロリータ』はオリンピック(オリンピアに由来)と不思議な縁がある。そのことを踏まえての「五輪ネタ」だろうか。仏教で五輪というと地・水・火・風・空のことだが、これらのモチーフは『ロリータ』においても頻出する。(ここ付け足し予定)。前回の記事「小惑星ロリータ」は「市川春子は『ロリータ』をどう読んでいたか」を私が勝手に汲み取って書いたものである。札幌からムツゴロウ並みに裏の裏を読む漫画家は、空前のスケールでぶつかり合う惑星を背に新たな覚醒を待っていた。ひらめきの喜び、発見の驚きを智慧の輪ひとつで表す試み。私はただそれに応えただけだ。そこで新たな星と方程式を見つけた。小惑星のテーマ群を除いた言葉遊びに限っては私の独創だが、それも『図説 宝石の国』によって『ロリータ』解読のヒントが(こっそり)出されていなければ存在しえなかった。ちなみにY-3579203181277の「Y」は小惑星の仮符号だと12月後半を指します。クリスマス・シーズン。ナボコフの自伝でムネモシュネが描かれている地図の中心にある川もY字型。第一発見者である私Yaoraの頭文字でもある。¥。複数のY。Ys。Yuya Sato。(`ェ´)ピャー

 

 

ということで、前置きが多少長くなりましたが『図説 宝石の国』解読ツイートを転載しておきます。予定の半分くらいの分量だけど、需要が特にない感じなんで後編はボツです。気になる人は中南米の銀山とか産業革命とか大陸移動説とかその辺自分でいろいろ調べてみてね。スペイン語の辞書を引いたりして。これを書いた時点では短篇「オーレリアン」と自伝しかナボコフ作品を読んでなかったので、「ムネモシュネ」や「2人の植物学者」が『ロリータ』に出てくることとかコート・ダジュールリヴィエラだとか知りませんでした。幼年期の太陽が沈む場面に登場する「虻」はフランス語で「タオン」、「丘」は中東の言葉で「テル」だとかも。「タオン(طاعون)」はアラビア語だと疫病(ペスト)。疫病ももちろん2020年ネタではあるし、喫茶店名に使われたリサージ(密陀僧→密だそう)とつなげようと思えばつなげられる(けど本筋は別にある)。アトロニウェア(ラテン語で黒・白)はブランチ・シュヴァルツマン(白・黒)やメラニー・ヴァイス(黒・白)に通じることとかも。あと『賜物』は原典だと母に捧げられてるのとか。小惑星番号もこれを書く数日前に知りました。カメノコハムシはたまたまtwitterで見かけた虫にピンときてその仲間を調べてみただけです。虫きらいなのに。いつもはツノゼミの写真を上げてるフォロイーさんがバナナ色のGをツイートしてて、その数時間後に黒いのがうちに出てみごと伏線回収したので八つ当たりでブロックしにいった時に目にして、「これだ!」って。そんな偶然と付け焼き刃の集合体です。